サバ

リチャードを探してのサバのネタバレレビュー・内容・結末

リチャードを探して(1996年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

前提としてシェイクスピア史劇リチャード3世や史実の薔薇戦争の登場人物について多少の知識を要する。

ものすごく面白い。まず冒頭のキング・リチャードがルッキング・フォー・リチャードに切り替わるシーンから漂う名作臭。シンプルなのにカッコいい。冒頭のインタビューも好き。

アル・パチーノら俳優陣とリチャード3世ら役柄陣の境界が薄れるような現実と虚構のシーンの入り混じりの表現や、現代の建物を用いた撮影がメタっぽくてかなり好み。カンバーバッチといい、リチャード3世はメタが必須科目なのだろうか。テンペストはラストそんな感じだったっけ。

王妃たちを弱者に描くとリチャードまでもが小心者に見える、いい台詞。製作陣の努力やら葛藤やらが実際に肌を通して伝わってくる。学者の意見まで映像に取り込むのすごいな。

亡霊の夢にうなされる、良心との間で葛藤するリチャードを現実(キャスト)と虚構(役柄)でシーン分けしていたのが印象的だった。二重性の表現として秀逸。現代アダプテーション作品ならではの演出感がありとても好き。

リチャードとバッキンガムの関係性をギャングでまとめていたのが個人的にツボ。たしかに悪どいことは大体やってるから納得だけど。

序盤と終盤にシェイクスピアが登場し、自らが描いたリチャード3世を一緒に鑑賞しているような感がある。が、最終的にやれやれとでも言いたげに首を振る。作者の理想のキャラクターではなかったかもしれないが、私はこの作品を面白いと感じたので、それでいいんじゃないだろうか。

とにかく面白かった。何回でも見返したい。
サバ

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