みや

イエスマン “YES”は人生のパスワードのみやのレビュー・感想・評価

4.5
観ていてとても気持ちのいい映画だった。
一歩間違えれば洗脳だし、フィクションだからと懐疑的な気持ちも、もちろんなくはないが、「最初は、とにかくイエスという身体に慣れさせる」というのが、なるほどと思った。

少し話がそれるが、この映画を観ながら、中島岳志の「思いがけず利他」という本を思い出した。談志の「文七元結(ぶんしちもっとい)」(博打の借金で首が回らない長兵衛が、娘のお久を女郎屋に預けることで貸してもらった大切な五十両を、帰りがけに出会った、橋から身投げしようとしていた見ず知らずの若者に、投げつけるように渡してしまう場面が出てくる古典落語)などを取り上げながら、「利他」について考えている本だ。

カールの「イエス」は、誓いということでスタートするが、結果として、その多くが「利他」になっているよなと、思ったのだ。

その本の中では、丁寧に様々な例をあげながら「利己心から見返りを求める“利他”ではなく、利己のない(そうせざるを得ない)“利他的な行為”は、それの受け手側が主体となること」や、「利他的になるためには、こちらが器のような存在になること」と書かれている。

この映画の中でも、カールの「イエス」は、まさにカール本人が器のように「イエス」と返している訳で、それの「イエス」により恩恵を受けた側は、何とも言えない温かな思いが残ったことだろう。いざという時のピンチにみんなが駆けつけてくれる関係が、受け手たちが主体となってつくられていることが、しっかり描かれている。

とはいえ、カールがどん底の時に、あれだけ友達が親身になってくれている訳で、元々、カール自身が人を惹きつける力を持っていたのだろうけれど、心持ちのちょっとした違いで結果が変わるということは、さもありなんと思った。

どこをとっても楽しい映画だったが、アリソンとの恋が進み始めてからが更によかった。

音楽に関しても、ジャーニーのセパレート・ウェイズが世代の人間なので、イントロだけでちょっと盛り上がった。
みや

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