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第七天国のpluviaのレビュー・感想・評価

第七天国(1927年製作の映画)
3.0
活弁入りで鑑賞しました。
第1回アカデミー賞でいくつか賞を取っている、1927年公開の映画。
物語の舞台は1914年前後のパリ。


『ダウントン•アビー』でいうと、ドラマ版が1912年から始まり、映画版は1927年が舞台。
『ミッドナイト•イン・パリ』(1920年にタイムスリップ)も含めて、私は戦時中は除く1890年頃〜1929年までのヨーロッパが好きで、タイムトラベルができるなら行くくらい大好きな時代というのを書いた上で、『第七天国』の感想に移ります。

期待大で鑑賞しましたが、言い得ぬ不安を感じて終えました。

映画公開の1927年は調べてみると、芥川龍之介が「ぼんやりした不安」を動機に35歳で自殺した年。

当時、映画館でこれを見た人々に想いを馳せると、
ロストジェネレーション(欧米で20代の時に第一次世界大戦があり、従来の価値観に懐疑的になった世代) や、ロマノフ王朝、オーストリアハンガリー帝国、オスマン帝国の崩壊を目の当たりにした人々、イタリアではムッソリーニ政権が発足していて、1923年の日本では関東地震、ドイツのマルク暴落とヒトラーのクーデター未遂。スペインではクーデターによる軍事政権ができて財政破綻寸前。

…暗い気持ちになってくる…。やはり映画とは、時に幻想を語り嘘をつくものだと思います…。
「上を向いて」という台詞には、「上を向かないと生活できないほど大変」と聞こえたし、
第一次世界大戦を舞台とすることで、「先の大戦も乗り越えたのだから今の苦労も乗り越えようよ」と言われている気がしました。

一方で、第1回アカデミー賞作品賞をとった『つばさ』という映画は、
その年1927年、リンドバーグが単独飛行で大西洋横断を達成したムードも影響したとか。
ジブリの『風立ちぬ』もそうですが、青空の飛行機雲を見るか、時代の暗雲を感じるか、人それぞれなのでしょうけれど…。
1920年代のエコール・ド・パリ大好きな私も『第七天国』では、暗雲と1933年の影を見てしまいました。

怖がることをやめるディアーヌは、青空のほうを見たのかなと思いました。

『第七天国』は1937年にもリメイクされているそうです。
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