Laura

こころのLauraのレビュー・感想・評価

こころ(1955年製作の映画)
3.5
原作が高度に抽象化された書簡体小説なので映像化には根本的な難しさがあると思うが、シナリオは原作に忠実でありつつ世界観を壊さず手堅くまとめられている。また原作には明治の終わりと乃木大将の殉死とか、「先生と私」「先生とK」のホモソーシャル的要素などなかなか難しい部分も多いのだが、無理に独自解釈せずそのまま引き継いでいるのも製作者の手腕だろう。先生やKの対話場面には海や水や汗や裸体が際限なくあらわれるのに対し、お嬢さんの存在にはそういう肉体性が一切ない。可愛らしいのだが底の見えなさみたいなものが新珠三千代にうまくはまっていて、漱石の女性観を原作を読み直して考えてみたくなる。森雅之が青年時代を演じる違和感を除けばキャスティング自体が奏功していると思う。
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