ブタブタ

ゲド戦記のブタブタのレビュー・感想・評価

ゲド戦記(2006年製作の映画)
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「『ゲド戦記』を~宮崎駿監督からアニメ映画化したいってオファーが来て~その後色々あって結局その息子が監督したら~最低ポンコツ映画にされちゃった原作者は~どこのどいつだ~い?あたしだよ!!」
(アーシュラ・K・ル=グイン)

アニメ映画『ゲド戦記』が何故こうなってしまったのかについての顛末はル=グイン先生自ら「映画について質問してくれた日本のファンと興味をお持ちのそれ以外のファンの方たちに向けて」と言うご自身のブログに全て書かれていて、その内容はハッキリ言ってこのポンコツ映画の百倍面白いです。
宮崎駿監督は初めフランク・ハーバード『DUNE』或いはル=グイン『ゲド戦記』のアニメ化企画を進めていたものの版権その他諸々の問題で実現せず結果的に自ら原作から立ち上げた『ナウシカ』を作る事になるのですが、そもそもル=グイン先生が『ゲド戦記』のアニメ化オファーを断らなかったらどうなっていたか。
『ナウシカ』は存在せず宮崎駿監督作品『ゲド戦記』が存在するifの世界。
ル=グイン先生は『トトロ』『千と千尋』を見て、その幻想的であり冒険活劇であり深い物語世界に感嘆し「ハヤオはフェリーニやクロサワと並ぶ天才だった」と一度は断ったアニメ化をジブリに打診、しかしハヤオは既に引退してしまったと落胆する物の彼の息子(…)が監督するという殆ど詐欺みたいな話しに引っかかってしまい「『ゲド戦記』を単に映像化するのではなく自分の創造した作品の世界・設定・キャラクター等、全てを自由に使って頂きたい」という破格の条件を出す。
之はやはり『トトロ』『千と千尋』の〝あの 〟ハヤオが『ゲド戦記』を映像化したらとてつもない映画になると期待したからでしょうし、ハヤオも監修・製作に加わるとの事で息子が監督だろうがソコは大した問題では無いと思ってしまったのでは。
「ドラゴンの翼のたたみ方がいい。あと馬の耳の柔らかい感じがいい」
宮崎吾朗監督『ゲド戦記』でル=グイン先生が「いいと思ったところ」はこの2つだけらしい。
フィルマークスで宮崎吾朗をクリックすると『アーヤと魔女』(2020)って出てくるんですけどメアリと何とかってジブリもどきの魔女アニメの失敗から何も学んでないのか。
なんでも魔女出せばいいってもんじゃない。

それと宮崎吾朗監督作品『ゲド戦記』は超つまんないです。
『ゲド戦記』3巻『さいはての島へ』を原作、そして宮崎駿『シュナの旅』を原案としてます。
ハッキリ言って宮崎吾朗という方に宮崎駿そしてル=グインという二人の天才作家が創造した世界をミックスして脚本化し映像化するなんて事は到底無理です。
吾朗氏でなくとも無理。
そんな事が出来るのは天才・宮崎駿氏だけでしょう。
小国の王子が貧しい国を救うために「麦」を求め旅立つ(シュナの旅)
そのミニマムなストーリーに世界の終焉(さいはての島へ)というマクロなストーリーをバックグラウンドとして王子は国と世界の両方の存亡を掛けて戦うとかだったら相当面白い作品になったのでは。
『影との戦い』からも中途半端に設定を持ってきてるのもダメポイント。
死霊と一緒に呼び出してしまった「影」は自分の影であると同時に「もうひとつの世界」でもあり、此処でも個人の「心の闇」みたいなミニマムな世界と「闇の世界」というマクロな世界との戦いが同時進行で展開する。
斯様にこれらを映像化出来てたら相当凄い映画になってたと思う。
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