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あらくれのakrutmのレビュー・感想・評価

あらくれ(1957年製作の映画)
4.8
徳田秋声が大正4年に新聞の連載小説として発表した同名小説の映画化。養家や夫の身勝手から各地を転々としながらも、力強く生きていく男勝りの女性・お島の半生が描かれている。ストーリーがどんどん展開していくので、細かい人間関係や筋のつながりが追いきれない部分もあるが、お島の生き様を見ているだけで十分に楽しむことができる。映画は戦後の作品であるが、時代設定は大正なので、その頃の風俗や言葉使いなども興味深かった。

そして、お島を演じている高峰秀子がとにかく凄い。最初の頃は夫に反発心を持ちながらもまだ大人しいのだが、東京で自立するようになった後半では、いよいよ本領を発揮する。一緒に洋服屋を経営する夫がろくに働かず怠けている姿を見てホースで水をかけたり、その夫の浮気相手の女性の顔を火鉢におしつけるわ、マウントポジションで殴るわ、足蹴にするわで、総合格闘家としてやっていけそうなあらくれぶりなのである。一方で、田舎の旅館で関係を持った若旦那が東京にこっそり会いに来たときに見せる嬉しそうな笑顔など、男を惹きつける可愛らしさも兼ね備えているのが、これまた魅力的である。このような女性を見事に演じている高峰秀子に脱帽するしかないし、本当に素晴らしい女優だと実感できる。おそらく、彼女以外にお島を演じられる女優はいないんじゃないかなあ。
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