櫻イミト

アリスの恋の櫻イミトのレビュー・感想・評価

アリスの恋(1974年製作の映画)
3.5
スコセッシ監督が「ミーン・ストリート」(1973)と「タクシー・ドライバー」(1976)の間に撮った女性映画。アカデミー賞でエレン・バースティンが主演女優賞を受賞。

娘時代に歌手を目指したアリス(バースティン)は35歳。粗野な夫に頼りきり、こましゃくれた11歳の息子トミーと平凡な生活を送っていた。しかし夫の事故死をきっかけにアリスは再び歌手を目指すことを決心。故郷モンタレーを目指し息子を連れてオンボロ車で旅立つのだが。。。

スコセッシ監督による女性映画は初めて観た(他にあっただろうか)。しかし描かれているのは他の作品と同じく、ままならない現実社会の中でどのように自己実現との折り合いをつけるか懸命にあがく人間の姿だった。

スコセッシ監督インタビューによると、本作は「自己に対する責任についての映画であり、同時にまた、いかに人は同じ過ちを何度も繰り返すかという映画」とのこと。確かにその通りのことが熱く表現されていた。

スコセッシ監督組となる脇役陣も見所。豹変と狂暴を発揮するハーヴェイ・カイテル。「タクシー・ドライバー」とは雰囲気の違う少年のようなジョディ・フォスター(当時11歳)。

前年のヴェンダース監督「都会のアリス」(1973)から”アリス”繋がりで鑑賞した。両作とも子連れのロード・ムービーだが仕上がりはまるで違う。個人的には同作の方が主人公が孤独なので好み。同時代の両作の比較は興味深く色々な考察ができそう。ちなみに本作はスコセッシ32歳時の制作。同作はヴェンダース28歳時。両作とも両監督の大ブレイク前夜のロードムービーとなる。
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