待つの

アメリカン・サイコの待つののレビュー・感想・評価

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)
5.0
増長した向こう見ずな自己愛だけだと個人の本質は跡形もなく消え失せる。そしてそんな個人の集合体としての社会というものは他者(の本質)に対してどこまでも自分本位で非情な冷たさを遺憾なく発揮する。今さら誰も本質には目を向けようとはしないだろうし、それ故に実相は一層わかりにくさを極める。あるいは内面とガワとをいたずらに分けようとする功利主義的で打算的な考えに則った個の捉え方自体が、この病的なまでに分裂した個というものの「わかりにくさ」を現出させているのかもしれない。
本作のこうした「わかりにくさ」を形而上学的な課題として扱うことも可能な余地を、本作は多分に残しているが、やはりパトリック・ベイトマンという極度の自惚れ気質でロマンチスト気取りの殺人者を主人公に据えているあたりを見れば、向こう見ずなナルシストたちが本質的に孕んでいる孤独こそを本作は突いているのだと個人的には感じられる。
何事にもスタイリッシュ好きでファッション好きな我々の正鵠を射た、という点で痛快かつ解放的な悲喜劇である。
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