新作のミュージカル版を見る前に、オリジナルのスピルバーグ版を久しぶりに鑑賞。
若い頃に見た時よりもちゃんと大人になってから見た今の方がずっとよかった。
「母がさせぬことをさせろ」と言われて父からレイプされる日々。父の子を2人産み、2人とも奪われ、子供はどこかへ売られていく。
なんて悲惨な話だろう。
だが、この物語の主人公セリーは、どんなことがあっても挫けない。
口下手で、醜いと罵られても、耐えて耐えて生き抜いて、絶対に負けない。
本作は、そんなネリーの不屈の人生の物語。
主人公セリーを演じるのは、あの名優ウーピー・ゴールドバーグ。そして本作は彼女のデビュー作だ。ウーピー・ゴールドバーグはデビュー作にして、この年のゴールデングローブ賞の主演女優賞を獲得している。
ウーピー・ゴールドバーグと言えば、おそらく『天使にラブソングを』の印象が強いと思うが、本作では、本当にシャイで口数の少ない、嫌なことがあっても言い返せない女性を演じているのだ。後年の彼女の印象とは真逆の役だ。
2人で1人のようだった妹ネリーとの別れ。セリーを奴隷のようにこき使うDV夫。牢獄のようなセリーの生活に一筋の光をもたらすのがブルースシンガーのシャグ。
シャグの存在が従うことに慣らされていたセリーの心を少しずつ開いていく。
「貧しくて、黒人で、醜くても、でも神様、私は生きている!」
それまでエンターテイメントしか撮ってこなかったスピルバーグが、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の後の1985年に撮った傑作。スピルバーグらしいのは、人を殺したり、決定的に残酷な暴力描写無しに描いていること。
元々シャグの歌う「セリーのブルース」などの名曲があったので、これがミュージカルになっていくのは必然かな?
ミュージカル版、楽しみだ。