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天安門、恋人たちのYUHOLLANDDRのレビュー・感想・評価

天安門、恋人たち(2006年製作の映画)
5.0
魂映画再上映シリーズ、十年くらいぶりの再鑑賞。映画館では初めてだったけど、35mmプリント上映での質感もよかった。
何でもかでも鮮明な画質でばかり観ている今だと、雨が走ってる粗い画面でみるの、映画観てるぞって雰囲気出ていいな〜。

ユー・ホンはいつもどこか“足りなさ”を抱えてる目をしていて、意志があるようでないようなそのうつろな表情をみていると、出口の無い感覚が伝わってくる。
大学寮のシーンでは自分の若さと美しさを持て余してるさまが危なっかしくて、常に不安の気配が通奏低音みたいに流れてる。青春のまぶしさとは違うけれど、文字通り体当たりな人間関係で世界を味わってる感じが匂い立つようで、よい。

大人時代のシークエンスはやや冗長かつ行き当たりばったりな印象で、それはそのまま彼女の男性遍歴、生きざまと重なるようだ。性の欲求がまさに彼女の生を繋ぎ留めている。
時代変わってベルリンの壁は無くなっても他者(との関係性)の計り知れなさは変わらずそこにあって、ユー・ホンと違ってリー・ティはその「存在の耐えられない軽さ」みたいなものにやられてしまって縁の向こう側へ落っこちてしまったのではないか。

ラストの逢瀬は、互いに忘れられなかった二人の再会にもかかわらず顛末の容赦のなさがシナリオ的に潔い、とおもう。
チョウ・ウェイという過去がユー・ホンの救いに成り得なかった、ってことが彼女のその後にとって救いだったのかもしれないな〜と、ふたたび観て感じた。