ナイトメアシンジ

DISTANCE/ディスタンスのナイトメアシンジのレビュー・感想・評価

DISTANCE/ディスタンス(2001年製作の映画)
4.0
脚本家・演出家・演技トレーナー・映画評論者の4つの顔を持つナイトメアシンジです。

今日、ご紹介する作品は日本映画『DISTANCE』(ディスタンス)です。

カルト宗教 映画『DISTANCE』(ディスタンス)は、2000年7月24日クランクインし、2001年1月完成しました。映画公開は2001年5月26日です。

映画『DISTANCE』(ディスタンス)は是枝裕和監督の長編映画3作目になります。

是枝裕和監督と言えば、2018年の「万引き家族」が有名ですが、それだけではありません。

日本アカデミー賞最優秀監督賞を3回受賞。(海街diary(2015年)、三度目の殺人(2017年)、万引き家族(2018年)。これだけ受賞する監督は珍しい。特に2018年野受賞は価値がある。「カメラを止めるな!」や「弧狼の血」などを押しのけて受賞)

また、是枝裕和監督は自ら脚本も書くスタイル。
最優秀脚本賞を2回受賞しています。
「三度目の殺人」と「万引き家族」です。

その他の映画でも内外の映画祭を数多く受賞。
(「誰も知らない」(2004年)「歩いても歩いても」(2008年)「そして父になる」(2013年)など)

言わば、日本映画界が誇る名映画監督の一人です。

中でも、映画『DISTANCE』(ディスタンス)はある意味、とても、実験的で前衛的な映画だと言えます。
キャストに手渡された脚本はそれぞれの出演部分だけ。相手の台詞は書き込まれておらず、俳優たちは物語の全貌を映画が完成するまで知らなかったそうです。

空白の部分は、それぞれの役者が感性と想像で埋めて作られました。また、スタッフ欄には、音楽・音響効果はありません。

映画において、本来であれば、”非常に大切な役割を担うだろう音楽”を使わないこの映画『DISTANCE』(ディスタンス)。

どうです?
映画『DISTANCE』(ディスタンス)に興味が沸いてきましたか?

【カルト宗教信者家族を描いた映画『DISTANCE』(ディスタンス)の凄さとは?】

是枝裕和監督は、このカルト宗教 映画『DISTANCE』(ディスタンス)において、アップシーンを極力使わずに撮っています。(ドキュメンタリー映画のように…。ドキュメント出身ですけどね)

そして、演者の自然な演技を引き出す為に、事前に相手の台詞を伝えないという大胆な演出方法。

もちろん、この映画『DISTANCE』(ディスタンス)はオウム真理教というカルト宗教集団の事件をモチーフに作られています。

もし、ある日、自分の家族に”得体の知れないカルト宗教集団に入信したい”と言われた時の驚きや戸惑い、怒りの自然なリアクションを引き出すための演出なのです。

映画を見る人間が”当事者として感じられるような作風”はなんとも言えない後味の悪さ、きまり悪さを感じます。

”リアル”の追求。
しかし、ここにある種の矛盾が生じます。
ドキュメントは”素”でありません。
カメラを回されて撮影されていることを認識している人間が”完全な素”であるはずがない。
そこには、必ず、無意識であろうが、意識的であろうが”取り繕い”があります。
”100パーセントの完全の素”を撮りたければ、隠し撮り以外にはないのです。
”自然、リアル、素”への挑戦。
是枝裕和監督の試行錯誤がこの映画には溢れています。

でも、説明台詞なし、長回し、近づかないショット、役者目線の映像、鳴らない音楽は、精神的に見る者を疲弊させます。

突き放したような演出、”人間は、結局、みんな一人だからさ。家族であろうが、なかろうが、100パーセント分かり合えたりしないんだよ”という事を改めて気づかされる。

哀しい。
寂しい。
むなしい。

筆者は是枝裕和監督映画を見る度、そんな感情になります。
(センチメンタルな終わり方ですいません)

映画『DISTANCE』(ディスタンス)はお時間と心に余裕がある時に御覧下さい。