かずシネマ

DISTANCE/ディスタンスのかずシネマのレビュー・感想・評価

DISTANCE/ディスタンス(2001年製作の映画)
3.5
自分の好きな役者の1人は、台本で自分の台詞や行動が書かれた箇所ではないところ、つまり他の出演者の台詞等をあまり読まないと言う。
その理由は「実際の生活でも自分以外の人間がどんな事を喋って、どんな行動に出るのかは分からないのだから、台本でそれを必要以上に知ってしまうと演技が不自然になる」というもの。
この作品は監督が意図して役者に相手がどうでるかを伏せた状態で進められたそうで、相手の言っていることを聞き返したり発言のタイミングが重なったりと、とても自然だった。

非常に息苦しい内容の作品。
怖くて、虚しくて、苦しく悲しい話だった。
相手の事を理解しているつもりでも、分からない事がたくさんあるのはきっと誰でも同じで。
なにかのきっかけで別の世界に足を踏み入れてしまった相手に対してはとても無力で、強く止めてもダメで。
そこへ行くのは傷をえぐられる以上の思いであっただろう「彼らが最期に過ごした場所」に実際に行き、彼らとの「思い出」を語り、彼らがせめて心穏やかであったのかどうか等を知る中で、少しでも残った人間の心も癒えれば良いと思ったし、そうであったと思いたい。

難点と言えば、ドキュメントの様な仕上がりの作品なので手振れもそのままである事。
画質も悪く画面も暗いので(意図してそうだとは分かっていても)、何がどうなっているのか少し分かりづらい場面もあった事。
特に前半、山道を歩く場面は画面がとても揺れるので目も頭も疲れた。
山道を車の中で進んでいく場面はマジで酔いそうになった…。

エンケンさん、津田寛治、りょうとそれぞれ別タイプの怖さがあったが、山下容莉枝さんの怒鳴られても何を言われてもずっと緩んだままの口元が一番怖かった。
もう引き止められないんだな…と思うより他ない感じが、とても怖かった。
それと、蕎麦だかうどんだかを食べている場面で、それぞれが職場や知り合いに電話をかけたり電話がかかってきたりしている中で、浅野忠信にだけ何も無いのが細かいな、と思った。

あとどうでもいいけど、出演者の皆さんがとても若い。
これくらいの時期の寺島進って誰かに似てるな~といつも思うのだけど、いつもそれが誰だか分からないw
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