緩やかさ

ナイト・オン・ザ・プラネットの緩やかさのレビュー・感想・評価

3.9
ジム・ジャームッシュ監督作品。
初期3作に熱狂した時期もあったけど「ミステリー・トレイン」でなんか違うとなり、それ以降気づけば一作も観ていなかった。

直後の1991年にこんなにしっかりした娯楽作を撮ってたんだ。
パリ編が好き。(ローマ編はドン引き)
もっと早く観れば良かった!とても面白かった。


そして、自分もかつて乗車したタクシーのエピソードをいろいろ思い出してしまいました、、

ウィノナ・ライダーが運転手を演じるエピソード1を観て「こんなに可愛いタクシーの運転手が実際にいるわけない」と思った方も多いだろう。
私もそう思う。




↓ここからは映画から離れるので読まなくて全然OK。


コロナ禍以前はまあまあな頻度でタクシーを利用していました。たいていは仕事絡みで。
今現在はリモートワークが主なのでほとんど乗っていません。

かつて乗車した、特に印象的なタクシーの話。
全て一人で乗車しています。


<雰囲気のあるタクシー>

東京都内で乗車した、個人ではないどこかの会社のタクシー。深夜ではない夜の時間帯。
30代前半くらいの男性の運転手で、乗車した際に丁寧かつミニマムな挨拶があり、行先を告げてからはしゃべらなかった。

まず乗車したときになんとも言えない良い匂いがした。
芳香剤の類だと思うけど、ルームフレグランスって感じの控えめで柔和な香りで「おや?」と感じた。

そして車内灯が独特な明かりで、たぶんシェードがかかっていてえんじ色っぽい間接照明が穏やかな空間を演出している。
静かな音量で音楽が流れている。

当時はデータファイルで聴くタイプのカーオーディオはまだなくて、ダッシュボードに車載用のCDプレーヤーがあるのが認識できた。

流れていたのはDiana Ross & Lionel Richieの「Endless Love」。

近距離でこの一曲分しか乗らなかったけど強く心に残る雰囲気のあるタクシーだった。


<おじいさんのタクシー>

昼過ぎに都内の混雑した道路で乗車したどこかの会社のタクシー。
運転手が年配の方のことって結構あるけど、この時は老人といってよいおじいさんだった。

昼間の23区内はたいてい道が混んでて、トラックなんかもバンバン飛ばしてて、自分では運転したくないといつも思っている。

私はタクシーではしゃべらないが、運転手が話してくるときは相槌くらいは打つ。
この時の運転手さんは話すというか、次のように私に告げてきた。

「私は後期高齢者でね、、正直なところ、もうこういう道を運転するのは怖いんですよ」

私はさらに怖くなった。78歳って言ってたと思う。


<イエローキャブ>

私は転職が多く、以前、長期の海外出張がある会社勤めをしていた。
ニューヨークに2か月滞在した時、移動は全てタクシーだった。タクシーエピソードもいろいろあったけどほとんど覚えていない。

日本に帰るとき、ミッドタウンからニューアーク空港まで乗ったタクシーの運転手(おじさん)がエジプトからアメリカに来たばかりとのこと。
英語ってことはわかるんだけど強烈なブロークンで、自分の英語力も貧弱だったため何を言っているのか全くわからなかった。
空港まで40分くらい、運転手は終始ご機嫌でずっとしゃべっていて、私は全く理解してないままニコニコと相槌を打つ日本人だった。


<若くて可愛い運転手>

若いとか可愛いとか普段は決して言いませんが、ここではお話として聞いてください。(気になる人は読まないで)
「ナイト・オン・ザ・プラネット」を観て思い出したこと。

最近といっていい2019年のある日。
都内で仕事(会食等ではなく作業)を終えると午前1時過ぎで、終電も終わっていたので流しているタクシーを拾った。
通りがかったタクシーに乗ったら女性の運転手だった。

控えめな挨拶、応答の声も小さく、物静かな雰囲気。
私は行先である自宅の住所を告げ、どこどこから高速道路に乗ってくださいと伝えた。

昨今、女性のドライバーは珍しくない。
ただ、この時の方は後部座席から見ても明らかにかなり若く(20代前半くらい)、
そして一般論的に言って、たぶんかなり可愛いかった。(コロナ前年なのでまだマスクの世の中ではなかった)
助手席の前に掲出しているライセンスの写真をチラッと見ると、やはり一般的にいって美人とか可愛いとか言われるであろうタイプだった。

次に思ったのは、この運転手はいろいろと嫌な思いをすることが多いのではないか、ということだった。
実際にそうかどうかは聞いていなのでわからない。 (念のため、私は男性です)

そう考えると、突然急に緊張してきた。

嫌な思いをさせる客ではない、というアピールをする方法がほかに思いつかず、
いつにも増して完全なる沈黙を保ち、ずっと窓から車外(夜の高速道路)を眺めていた。


緊張というのは伝染する。車の中という狭い空間ならなおさらだ。

彼女にも私の緊張が伝わったようで同様に完全に沈黙、深夜の車内はピンと張り詰めた空間になってしまった。
(ラジオ等もなく無音だった)

これはこれで嫌な客だと思いつつも、それを通すしかなく、
自宅までは高速に乗っても小一時間かかるのが果てしなく長く感じた。

家の近くのコンビニで下車、運賃を払うとともに安堵する。
レシートを受け取ると、運転手さんも少し安堵している様子だった。


冒頭の話に戻ると、乗ったタクシーの運転手がウィノナ・ライダーだったってこともあり得なくはない、と。

長文失礼しました!
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