こーひーシュガー

ナイト・オン・ザ・プラネットのこーひーシュガーのレビュー・感想・評価

3.8
【切なく可笑しい5つの人生の物語―――『ナイト・オン・ザ・プラネット』】

同じ夜、まったく異なる5つの場所を走るタクシーの中で繰り広げられる、運転手と乗客の他愛もないようで真剣な会話劇。

夢、家族、他者、性愛、喪失。
オムニバス形式の映画で一つ一つのエピソードにテーマがある。
誰にでも人生がある。
楽しいこと、悲しいこと、怒りたいこと、嬉しいこと、後悔してること…
それらを一人で抱え込みたい人もいるが、誰かに話したくなることがある。
私の話を聞いてほしい。
聞かないでほしい。
人生は他人との関わりを押し付けられているが、それも愛せる人が生きやすくなる。

タクシーという閉ざされた空間だからこそ腹を割って話し合える。
懺悔室との対比を表すセリフ、シーンがあったが、まさにタクシーは「懺悔する者の素性を知った上での懺悔室」になりうる。

映画を観終わって外に出たとき何台もタクシーが走っていることに気づいた。普段は気にしたこともなかったが、こんなにもたくさんのタクシーが走っているのか。そう思った。
彼らは車中で何を話し、何を胸にしまっているのだろう…