何気ないやり取りに浮かび上がる情と、滑稽さに張り付いた皮肉。乾いた会話に滲む人間味が愛おしくて愛おしくて、ああ、人間ダサくてかっこいい生き物だなぁと思いました。
ドラマが宿る場所として、タクシーはあまりにうってつけ。知らない人との交流はいつも、顔は思い出せなくなっても、その場所の景色と会話の輪郭は忘れない。記憶の特等席に残る気がします。
切り取られたそれぞれの夜の、適度な緊張感と、どんな人間でも許してくれそうな懐の広さ。心地よく冷たい空気は、人の心の薄皮を剥がしてくれる。以前旅行した時の、ヨーロッパの夜の感触を思い出して、愛が溢れました。
