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マクベスのpenのレビュー・感想・評価

マクベス(1971年製作の映画)
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ジャンル的にホラーって訳では無いと思うけど、ホラー映画のように怖かった。

一面に拡がるぬかるんだ大地、立ち込める濃霧、黒色の山々、曇り空。始まって早々に終末感の漂う世界が提示され、晴れの日のシーンでもその印象は残り続ける。
映画は一息つける場面は無いといってよく、最後まで暗く沈んだ雰囲気で物語は進んでいく。

カメラワークは1つ1つの画を作り出すというよりも、手持ちカメラがいま目の前で起きていることを撮っているかのように映され、事件の目撃者になった感覚で映画を観ることになる。
特にマクベスの領地で起きた「事件」の翌日、その現場へ踏み込む場面は、犯行現場に足を踏み入れていくかのような生々しさを感じた。

その「生々しさ」に拍車を掛けているのがスプラッタ描写だ。
とはいうものの、終始血がドバドバ出る訳じゃない。しかし人間の生死が関わるような場面は血と異様な泥臭さに塗れるように表現され、強く印象に残る。
例えば作品冒頭に出てくる怪我をした人物の顔は激しい殴り合いをした格闘家を連想したし、赤く濁る水溜りは『プライベートライアン』冒頭を思い出した。

先述した要素だけでなく悪夢ともいうべきおどろおどろしい映像もあり、人間の欲望と破滅のドラマと相まって(悩み過ぎて墓穴を掘る序盤のマクベスや彼をけしかける夫人には笑ってしまったけど)、本作は振り向けば地獄、そんな恐ろしい映画だった。

押井監督が影響受けたのは一番最初に書いた風景描写と思われる。ほぼ『アサルトガールズ』の風景だったので。
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