ブタブタ

HOUSE ハウスのブタブタのレビュー・感想・評価

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)
4.0
紛うことなきカルト映画。
アヴャンギャルドの極みというか大林宣彦監督長篇第一作にして最高傑作(か?)
長篇第一作になる予定だった『花筐』は『HOUSE』のスケールアップリメイクみたいだった。
両者は「戦前・戦後」の戦争を挟んだ表裏一体の関係にある(と勝手に思う)
大林宣彦の映像表現はほぼこの第一作で完成されてる。
明らかにわざとやってる一目で「絵」だと分かる背景(それも有り得ない程不自然)やチープなクロマキー合成。
アマプラに来てたので確か子供の頃にテレビで見て以来鑑賞。
常にタンクトップとホットパンツで空手の達人という設定のクンフー(神保美喜)は超常現象が起きるとペレレレ~ン🎶というBGMと共に明らかに人間の身体能力を超えたアクションを見せる。
「セッシャ」「オヌシ」等の台詞回しや「~だ」みたいな男言葉のチャンポンで喋る黒髪ロング・長身美少女のキャラクター、コレって『デビルマン』の美紀ちゃん的な少年マンガのヒロインであり昨今のアニメにもよく登場する典型的な妄想の架空美少女。
公開時は男子中高生の人気No.1だったのも分かる。
主人公オシャレ(池上季実子)はおばちゃまの跡を継ぎ、あの怪物屋敷の新たな主になってこれからも訪れた少女達を喰って永遠に生きていくのだろう。
怪物化した白無垢スタイルのオシャレとクンフーによるクライマックスのバケモノVS超人のバトルも見せ場である。
最後は下半身だけになっても死なず怪物の本体?である猫の絵に飛び蹴りを食らわせる不死身のクンフーは完全にラノベのアタシTUEEEE主人公。
『花筐』と『HOUSE』共に根底には強烈な反戦メッセージがあり、『花筐』のおばさま(常盤貴子)と『HOUSE』のおばちゃま(南田洋子)は屋敷に一人残り、戦争に行った人々を待ち続け人外の存在になってしまった同一人物にも見える。
そして何より特筆すべきは七人の少女の中でもヒロインという存在、ファンタを演じた之が実質的なデビューでこの後アイドルとしてブレイクする直前の大場久美子の異常な可愛さ。
基本キャーキャー言ってるだけの役立たずで所謂ホラー映画に於ける「志村、後ろ!」要員。
そして何故か最後の方まで生き残るのがパターン。
このファンタの本当にマンガから抜け出して来た様な非現実的可愛さは凄くて、まだデビューして間も無いこの頃の大場久美子の正にこの瞬間にしか演じる事は出来なかった、この映画の中にしか存在しない美少女だと思う。
この僅か五年後には『丑三つの村』で殺される役とか大場久美子さんはやってるので「ファンタ」みたいなキャラクターの存在は本当に貴重な極々短い時間を切り取った物なのだと思いました。
2011年に今は無き銀座シネパトスで開催された『HOUSE』上映&大林宣彦監督、大場久美子さんトークショーで、当時のイベントレポート等を読むと大場久美子さんは「『HOUSE』は自分の(出演)映画の中で最初にして最後の女優としての思い出の作品」みたいな事を語ってるので、アイドルとしてブレイク、その後の女優転身後は作品に恵まれず『HOUSE』こそが大場久美子さんの女優人生で最初にして最後の、そして最高のベストアクトだったのだなと思いました。
(テレビの方では『コメットさん』がありましたが)
コレはA24製作でアリ・アスターか?って書いてる方もいますが、その位センスとお洒落感と前衛・実験的、ポップでアヴャンギャルド満載な映画で、日本映画界がもっとマトモだったら大林宣彦監督にもっともっと予算を与えて『HOUSE』を超える滅茶苦茶な大作映画を作って貰えてたのかと思うと非常に残念なのでした。
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