欧州の映画を好んでいる割に手を付けていなかったヴィム・ヴェンダース監督の作品。『PERFECT DAYS』に続いて今作もドイツを舞台にした映像作品では無いが彼の作品を構成する要素はこの時点で既に完成している様に感じた。
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私が好んでいる現代における映画の多くはこの映画のエッセンスが派生して制作されたものといっても差し支えがないと思う。
①『カモンカモン』で見られた様な大人と子供の関わりあい、②ケリーライカート監督作品に見られる結局何処にも行けず振り出しに戻るロードムービー、③それら全てを上手く絡めた男女間の関係性。
この作品に関しては脚本家が別に存在するが、一歩間違えれば地味になってしまう(実際、大好きな作品だが地味であるものも数多い)中で、大量のカット割や色彩で全く飽きずに作られているのは非常に稀有だと感じる。
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後半のトラヴィスの独白は頭を抱えて観ていた。もう戻らないものを目の前にしてそれを回顧する上での深い悲しみや諦め、なんとなく最新作と共通するものを感じ得ない。