パリ、テキサスの作品情報・感想・評価・動画配信

パリ、テキサス1984年製作の映画)

Paris, Texas

上映日:1985年09月07日

製作国:

上映時間:146分

ジャンル:

4.1

あらすじ

「パリ、テキサス」に投稿された感想・評価

lente

lenteの感想・評価

5.0
僕たちをつかみにくるものとは
ヴィム・ヴェンダース
1/3

たとえば、人が人であるためにという難問を問いかけてしまう人がいるように(僕もそのうちの1人です)、映画が映画であるためにという難問を、映画に惹かれていく心は問いかけてしまうのではないか(僕の場合は前者の問いを通してのようです)。

本作はそうした意味での、映画とはという問いを僕たちのなかに呼び起こすものでしょうけれど、決して難解な作品ではありません。「難問」であること「難解」であることとはまったく意味が異なるはずです。またこうした問いは解くことに意味があるのではなく、問いかけることそれ自身に価値があるように思えてなりません。

物語として分かりやすく仕立てられた調和ではなく、むしろ現実として僕たちが慣れ親しんでいる不和が、本質的にはどのような姿をしているのかを描いた作品。ですからトラヴィスがどのように行動したかではなく、彼が何につかまれてしまったのかがポイントになっています。

久しぶりに観て、映像の美しさもまた作品のテンポに作用することをあらためて感じました。音楽でも心理的に響くサウンドの美しさは物理的なテンポに作用することがよくあります。映像を観てそんな風に思ったのは『アラビアのロレンス』(デヴィッド・リーン監督, 1962年)以来かもしれません。圧倒的に美しい映像。

タイトルのタイポグラフィ『PARIS,TEXAS』もたいへん効いており、韻を踏んだ響きにラストまで連れていかれるようでした。



やがてこのタイトルは物語が進んでいくにつれ、呪いの言葉として機能していることが分かってきます。トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)の父親と、トラヴィスとの間で「S」の韻のように受け渡された呪い。映像の色彩の深みもまた、これは呪いに関しての映画であることを雄弁に物語っているように感じます(ブルース・フィーリングに溢れたライ・クーダーによるギターサウンドが融けあうのも素晴らしい)。

PARIS,TEXASという音韻に象徴された呪いが、不吉に美しい映像の向こう側に、目にこそ見えないものの実態感をともなって僕たちを引き寄せていきます。呪いとは、ある種の「想念」と言い換えてもいいかもしれません。

ドストエフスキーが主要4作品『罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』で描き出したものや、シェイクスピアが4大悲劇『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』で演出したものに近いかもしれない。

妻子を捨て4年間失踪していた兄のトラヴィスを、弟のウォルトが連れ戻す一連の様子が映画のはじまりとして描かれます。やがて妻の居場所を知った兄トラヴィスは、弟夫妻のもとで養育されていた息子のハンターと彼女を探しに行くことになります。そして妻を見つけ酒に酔い、父親(息子にとっての祖父)に関する話を息子に語って聞かせるシーンがやってきます。

フランスの首都と同じ音のテキサス州パリスで母と出会ったことを、はじめはジョークのように話していたトラヴィスの父親。しかし父親は、やがて自らのジョークを信じ込んでいってしまうようになります。また悲しげに息子にそのことを話すトラヴィス自身が、マジックミラー越しに妻と向き合う覗き部屋で、父と同じように妻を扱った過去をもつことが明らかになっていきます。

トラヴィスの父親も彼自身も、ある想念にとり憑かれていた。その想念はいったん彼らをとらえてしまうと、目の前の現実を歪めていきやがては崩壊させていく。決して訪れることはない1枚の写真に写っているのはテキサス州パリス。かつて父と母が出会ったとされるところ。

他には何の価値もなく、自身も決して訪れることはないだろうその土地をトラヴィスが買ったのは形のない想念だからであり、親子2代にわたって回転し続ける呪いの地軸として彼をとらえ続けているからです。



この作品に難解さがあるとするなら、こうした抽象性にあるような気もします。なぜそれほどまでに、トラヴィスや彼の父親を「それ」はとらえてしまったのかが、具体的には示されていないからです。しかし想念とは本来そうしたものであり、想念のもつ恣意性(必然ではないこと)が本作ではよく描かれているように思います。

また妻に対する執着と拒絶といったトラヴィスのとらわれ方は、年齢差も含め『オセロー』を思わせますし、親子間の継承的なとり憑かれは『ハムレット』のようでもあります。あるいは現代という神なき世界のなかで、想念が預言のように強く働いていくさまは(預言者の多くはトラヴィスのように荒野をさまよう)、『罪と罰』のラスコーリニコフ、『悪霊』のスタヴローギン、そして『カラマーゾフの兄弟』に描かれるカラマーゾフ一家さながらのようです。

さらに息子と妻に対してみせるトラヴィスの振る舞いは、ドストエフスキーの『白痴』で描かれる主人公ムイシュキン公爵に酷似しています。ムイシュキン公爵もまた、ある見えない障壁によって(本作に登場するマジックミラーのように)、現実世界との距離を永遠に縮められない存在として描かれています。

トラヴィスとムイシュキン公爵の共通点としては、虚しい優しさに覆われていること。ある想念に徹底して心をとらわれた経験をもつ彼らにとって、目の前で起きていることに意味や価値がない。どれほど理性が働きかけようとも、意味や価値がないものに対して人は手を触れる力を持たない。彼ら2人はただ涙する。けれど涙は、失われたものには決して届かない。

古典であれ現在のものであれ優れた作品の多くは、たとえば基礎科学のように直接性をもちませんが、それだけ高い象徴性をもつことになります。本作でもまた、トラヴィス(と父親)がとらわれたものの正体は、直接的には明かされません。

しかしそれは『PARIS,TEXAS』としてしか語り得ない何かとして、僕たちの心を強く引き留めます。それは僕たち自身の心のうちに、テキサス州パリスが存在することを物語っているはずです。
Miki

Mikiの感想・評価

3.3
空白の4年間とロードトリップや親子関係の再構築といった前半はよかったんだけど、トラヴィスのドロドロな過去を聞いて普通に引いた。擁護しきれないし、家系というか親父のせいにしてたけど、覚悟もなく子供を産んだのも悪い。誰もが親になれるわけじゃないけどさ…
穏やかな雰囲気は都は裏腹にハードな作品でした。ハンター役は難しい状況に置かれた子どもをよく演じ切れてたと思います。
自分にも沢山思い当たる
ダメ男のどうしようもなさに
何とも言えぬ気持ちに…

ひたすらボーッと好きな風景を眺めてるかのようなシーンが多くて
またいつか見返せるように
手元に置いておきたい作品。
親と子の関係、家族の在り方ってほんまに様々なんやなーと
観ててロードムービー好きなんや俺って思った
絵になるシーンばっかりで、特にハンターと道を挟んで歩いて帰るとこお気に入り
ライ・クーダーのスライドギターの音が映画の空気感に絶妙に合っててかっこよかった
これからもトラヴィスは空じゃなく土を求めて歩くんやろうな
にしても序盤のセットアップに赤のキャップにボロボロのサンダルってスタイル出すぎ
きつね

きつねの感想・評価

3.3

このレビューはネタバレを含みます

お前は合流しないんかい!で終わってしまった。
男の人の面倒くささがうまく描かれていましたね。

ジェーンが今後ハンターをきちんと育てられる気がせず、感動的ではありますが不安になるラストでした。
弟夫婦すごいいい人達なのに、なんか可哀想。。
とか現実的に観てしまって、この作品に入り込めなかった気がしてます。

ハンターの下校時、待ち伏せするも友達の車に乗って帰ってしまったシーンが1番切なかったです。
vanilla

vanillaの感想・評価

3.8
ガラス越しのシーン、荒野のテラスにぽつんのダイナーのソファにトレーラーハウス、緑の街灯、テキサスの給水塔、ピンクのモヘアのワンピースetc..絵的には本当に素晴らしくて好きだったな〜というシーンはたくさんあるけども、話はけっこう酷くない?ストーリー的にはいや弟夫婦の扱い過ぎやろ…という気持ちが拭えず
弟いい人すぎる
とことんダメダメ兄やけど、ほっとけないよねこんなの

ヒロインがお美しすぎた
30年ぶりくらいに鑑賞。
赤が印象的。
ナスターシャ・キンスキーの美しさ。
3244

3244の感想・評価

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粗探しをしようと思えばできると思うけどそれを超えられてきた感ある映画
mei

meiの感想・評価

4.3
心臓をギュッとつかまれるロードムービー。
ただ過去を語るシーンであんなに切なく苦しい感情にさせられるなんて。

表現として正しいかわからないけれど「ベティ・ブルー」と「クレイマークレイマー」のロードムービーバージョンという感じで、嫌いなわけがなかったです…
やっと観られて本当によかった。
pita

pitaの感想・評価

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このレビューはネタバレを含みます

🏜🚶🚙🤐🛤✈️👢👠🎞🏦🚗🪞📞
振り回される弟夫婦と子供かわいそ!と思うけど、まぁ親も1人の人間だからな…人間くさい描写が巧みだった。深い愛の物語。切ない。でも弟夫婦のお母さんが一番可哀想😇
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