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パリ、テキサスのかずシネマのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.9
主人公トラヴィスは【解離性遁走】ってやつだったのかな。
段々と喋る事も思い出す事もできる様になっていった様子をみるに。
個人的に今とても感傷的になりやすくなっているからか、最後の方で込み上げてくるモノがあった。
泣かせにかかってくるような話ではなかったのに。

場面場面の色が、その画面内にいる人物達のその時の感情を表している様に感じた。
夜の緑がかった色、曇り空の灰色、晴天の郊外の黄みがかった色。
赤がよく効いた画面、再会は黒。
褪せた様な温かみのある8ミリの映像。
最後は真っ赤。

この作品は撮影中でも脚本が仕上がっておらず、難産だったと聞く。
そのせいもあってなのか、投げっぱなしのまま終わった部分がいくつかあったと思う。
なので意図してそうだったのかは分からないが、そうやっていくつかの事を投げっぱなしにする事によって「あくまでトラヴィスが主人公である」と、より強く感じた。
「作品は終わってしまったけど、結局あれやそれはどうなったのか?」と思う事があっても、それは「主人公にとっては重要でない事」だったのではないかと。

田舎のロードサイドのドライブインやらモーテルやらってとても心を惹かれる。
最初のモーテルと、その次の開けた道路沿いにあったモーテル、高速を降りた後に立ち寄った場所、ロスの家から見える景色。全てとても好きだった。

レストランのシーン。
「でも、僕は君の弟だよ」という台詞だけで優しさが伝わってくる。
トラヴィスが涙を流すのも。
あと、彼女があの仕事(というか職場の環境というか…)を選んだ理由にも大変納得した。
というか、あのお店のマネージャーっぽい男性がジョン・ルーリーでちょっと吹く。君、そんなんばっかりやな!w

4年はある程度の大人になればあっという間。8歳の子にとっては人生の半分。
考えてみれば当たり前の事だが、なんかしみじみ「そうだよなぁ…そりゃ長いよなぁ…」なんて思ってしまった。
大人だって子供の頃は1年間があんなに長かった筈なのに。
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