YP子

パーフェクト ワールドのYP子のネタバレレビュー・内容・結末

パーフェクト ワールド(1993年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

1番好きな映画です。
もう数え切れないくらい見ています。

泣きます。
兎にも角にも、泣きます。この映画。

これはただの脱獄犯と警察の鬼ごっこではありません。逃げる逃げないの話ではないです。ハラハラドキドキカーチェイス!とか、どうやって人質を解放させよう!?とかの映画ではないです。

ブッチとフィリップの絆の物語です。

フィリップとブッチが出会ったその時
ブッチに銃を持たされ「狙え」って言われ
言われた通りブッチに向けて銃を持つと
「perfect!」と言われ、ちょっと嬉しそうな顔するフィリップ。
フィリップはブッチに恐怖というより何かを教わって誉められて得意になれる感情がここから少しずつ増えて行きながら
ストーリーは進んでいく。

まだ8歳で子供のフィリップには
ブッチが犯罪者で脱獄してるなんて
わかってはいないと思う。
わかっているのは警察に追われてる、銃を持った人ってことくらい。

銃で相手を狙うこと
ナビゲーターになること
ハロウィンで家を訪ねること
マスタードサンドをつくること
車を運転すること
ローラーコースターにのること

銃の扱いは別として、
父親が教えてくれるような事や
普通の家庭では当たり前の事を
(宗教的な事も、もう置いておいて)
ブッチが教えてくれて、誉めてくれたり、
一緒に楽しんでくれた。
違う時は違うとはっきり言ってくれたし。

だんだんと父親への気持ちみたいな感情や
友情みたいな感情がフィリップの中で増えていったから、ハロウィンやる時にフィリップがブッチの手を握ったんだと思う。

ただ、フィリップは最初からずっと銃で誰かを脅してるブッチを見てる時の気持ちもずっと隣り合わせで持っていて
ブッチにそれをやめて欲しかったんだと思う。
農場で車盗んだ時、追いかけてきたおじさんがブッチに殺されるって思ったフィリップはわざとおじさんを振り落とした。
おじさんに(というかもう誰にも)死んで欲しくないし、ブッチにこれ以上悪いことをして欲しくなかったからだと思う。

ブッチのことは好きだけど、銃で人を殺す事はしてほしくないっていうモヤモヤを抱えてのあの衝撃のブッチ撃っちゃう結末なんだと思います。
ブッチの事は大好きだけどフィリップの子供心の中で、確実にあの場面は「悪」でしかなかったしね。

フィリップの喜怒哀楽の表情はものすごくたまらない。
もうかわいすぎて、嬉しい表情のときは思わずほころぶ場面も多々ありました。
最後の淋しがる泣きのシーンは
もう言葉になりません(涙)
自分の甥っ子とかにあんな感じで泣かれたら、もう無理です。

でも、この映画の何がせつないって
ブッチの過去と父親への想いです。

父親の元に返すより刑務所にいた方がまだいい。と思われるほどブッチは父親に酷い事もされてきたのかもしれない。
でも父親を慕っている。けどきっと望むような関係ではなかったんだろうね。それでもブッチは父親が好きだ。
自分の親がひどい事をしても、結局嫌いにはなれない。その狭間で子供は悩んでしまう。
だから、子供にひどい事をする親を見ると
自分の感情と重なってしまうんだろうね。
フィリップが、ブッチを好きだけど悪い事するブッチは嫌。その狭間でモヤモヤしてたのと同じだよね。

ブッチはずっと親からの愛を求めている
純粋な少年みたいな心の持ち主なんだと思う。

だからこの2人は似ているんだと思う。

IQが高くて完全な善人でも悪人でもないブッチの全然物事にあたふたしないスマートな所とか、フィリップに接する時の優しくて父親っぽいところとか、もう大好き。
かっこいい。頼りがいある。
けどその陰にあるブッチの苦しみも伝わってきて、もうなんとも言えない気持ちでせつなくなってしまう。


最後、警察に囲まれた時のフィリップの「ブッチは撃たれるの?涙」が
もうなんとも言えない。思い出すだけで泣けてきてしまう。
あれはフィリップが、人質の自分がブッチから離れたらブッチが撃たれてしまうって分かっていたから引き返してブッチと手を繋いで一緒に行こうとしたんだよね。
フィリップは、子供だけどブッチといる間に色んな事を覚えて、色んな事を見極めてきて、最後に出た答えが「ブッチは悪い人じゃないよね?」って事だと思う。
そして、ブッチがフィリップを引き渡す間際「かわいいお化け」って初めてフィリップへの素直な気持ちを伝えた。
フィリップは狭間からちゃんと答えを見出して正しい方へ一緒に行こうとしたんだと思う。

なのに...

なのになのにー!!!!!!!
あいつ!!!!!!

f**ckin'ティアドロップヤロー!!

ほんとに!ほんとに私もイーストウッド達に続いて殴ってやりたい!!!

でも、ラストのシーンでは
目を開けてフィリップを眺めてた。
私はブッチは死んでいないと信じてる。


ブッチは完全な善人ではないし
大切な人を痛めつける人に厳しいだけ。
それは育った環境のせい。
子供にはどうすることも出来ない
生まれてきた自分の環境。

今の時代でも起こる悲しい少年犯罪や
家庭環境が原因で犯罪に手を染めてしまう事件と似ている気がする。

そんなせつなさに襲われる映画です。

ブッチのせつない人生で、父親はいなくても真っ直ぐで純粋なフィリップと出会った事はとても大きくて大切な事だったと思う。

ブッチが目指したパーフェクトワールドは何もかもから解放された愛にあふれる親子関係で、それこそ父親がいるアラスカにあると純粋に信じていたんだと思います。


せつないけど、ほっこりと温かい気持ちにもなれる。話こそ逃走劇風だけど現実社会に日々起こっているリアルな感情を現した映画だと思います。
YP子

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