がちゃん

パーフェクト ワールドのがちゃんのレビュー・感想・評価

パーフェクト ワールド(1993年製作の映画)
3.7
クリント・イーストウッドが、ケヴィン・コスナーを主演に迎えて自らも出演した一編。

刑務所を脱走した二人組が、押し入った家の少年一人を人質に取り逃亡を続けるが、途中、脱走犯の一人が人質の少年フィリップに性的いたずらをしようとしたところを、もう一人のブッチが射殺。このブッチをケヴィン・コスナーが演じ、少年と二人逃亡の旅に出る。

ブッチを追いつめるのが、テキサス警察の署長、クリント・イーストウッドで、市長専用の豪華トレーラーハウスに乗り込み、女性犯罪心理学者、ローラ・ダーンが、捜査に絡んでくる。

凶悪犯と少年の逃亡劇。

旅を続けるうちに愛情に近い友情が生まれるというのはこの種の作品の定番パターンですが、演者、特にフィリップを演じる子役、T.Jローサーが子役にありがちな可愛さ過剰の演技ではなく自然体で演じているので、素直に物語に入り込める。

物語が進んでいくうちに、ブッチの過去や、警察署長との関係が明らかになっていくのだが、ここにあっと驚く展開はない。

どちらかといと優男の風貌のブッチが、ある琴線に触れると、彼を慕うようになったフィリップさえも怯えてしまうような凶暴犯の面を見せるところにサスペンスが生まれる。

ブッチにとっての理想郷(パーフェクト・ワールド)へ向かっての旅には、フィリップの夢をかなえたいというファンタジィの要素も強くなっていくのだが、個人的にはこの部分をもっと強化して描いてほしかった。

フィリップのやってみたいことメモには、もっとたくさん願い事が書いてあったと想像でき、それをブッチがかなえてあげるという物語なら、オープニングとエンディングでブッチが横たわるパーフェクト・ワールドがさらにファンタジイの世界となり説得力を増すんじゃないかなと考えた。

とはいえ、追いつめられた二人を警官隊が取り囲むクライマックスは、イーストウッド監督の演出が冴え、手に汗握る。

ハロウィンの行事を利用しての強盗や、新車を乗っ取られる家族のエピソードなど、ほのぼのしたエピソードが物語の緊張と緩和に作用しているところも上手い。

ただ、ドライブインでのお色気シーンは、こういったとぼけたファンタジィ要素を壊してしまい不要。
警察署長と市長の対立もおざなりになってしまった感。

クライマックスに市長の思惑まで入ってくればもっと面白くなったんじゃないかなと思います。

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