yukacafe

パーフェクト ワールドのyukacafeのレビュー・感想・評価

パーフェクト ワールド(1993年製作の映画)
4.2
長年名作として語り継がれているのには確固たる理由がある、ということを再認識させてくれた作品。クライマックスシーンでは、久しぶりに涙が止まらないほどの感動で心が震えた。

1960年代のテキサスを舞台にしているからか、初めのうちはそのゆったりした空気感が実際に起こっている出来事と合っていないように見えた。緊迫した状況の中、機動力のないトレーラーで犯人を追跡したり、当時はまだ珍しかったであろうプロファイラーの女性を蔑視してみたり。度々挟まれるコミカルでほほえましいシーンにも違和感があったのだが、それらはすべてあの素晴らしいクライマックスとコントラストを持たせるための手法だったのかと、観終わった後で一気に腑に落ちた。

このクライマックスには後の傑作、「グラン・トリノ」に繋がる要素が凝縮されているようで、クリント・イーストウッド監督が物語を紡ぐ上で大事にしているバランス感覚の一端を理解できた気がした。すべてを語らず、この後に続いていく物語を示唆して、その先を観客に委ねる。最後まで観終わった時、オープニングシーンの意味がわかる作りになっている構成や、クライマックス前のシーンでの音楽の使い方も素晴らしかった。"A Perfect World"というタイトルにも、イーストウッド監督の思いを感じ取らずにはいられない。

主人公のブッチを演じたケビン・コスナーは、まさにキャリアの絶頂期といった存在感で、複雑な過去ゆえの歪んだ道徳観を持った男の悲しさを見事に体現していた。ブッチの生き様は、人間の善悪が一面だけで判断できるものではないことを教えてくれた。
yukacafe

yukacafe