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座頭市あばれ凧のodyssのレビュー・感想・評価

座頭市あばれ凧(1964年製作の映画)
3.0
【凧じゃなく花火のお話】

座頭市シリーズ第7弾。
あばれ凧というタイトルですが、別に凧は出てきません。この作品で印象的なのはむしろ花火でしょう。

冒頭、昼寝をしていた座頭市が、ハエがうるさいというので、飛び回るハエを剣で叩ききって周囲の人を驚かせるシーンがあります。

しかしそのあと、座頭市はある男に鉄砲で撃たれて負傷。傷がどうにか治っても、しばらくはおとぼけぶりで場面が続きます。

やがて、傷を治す算段をしてくれた人が誰か分かって訪ねていくのですが、それは美しい女性(久保菜穂子)。川辺をとりしきる親分の心優しい長女です。座頭市は彼女の配慮でしばらくその親分の家に逗留することになる。しかし、川渡し人夫を配下に持ち、近所の人々を毎夏無料花火で楽しませている寛大な親分を、近所のヤクザの親分がねたみ、なんとか川渡しの権利を自分のものにしようと陰謀をめぐらせて・・・

前半はおとぼけぶりが目立つ座頭市ですが、後半は一転して殺陣の冴えを見せてくれます。映像も、影をたくみに利用したり、光と闇の対比をはっきりつけるなど、工夫が見られます。

ただ、川の中で座頭市が敵数人を斬り殺すシーンがあるのですが、水中の殺陣で斬られた側が血を流すところまでは撮られていますけれども、なぜか全体を俯瞰するシーンでは川が赤くなっていません。瑕瑾ですが、ちょっと杜撰な感じがしました。

それと五味竜太郎が悪役親分に雇われる浪人役で出ていますが、わりにあっけなく座頭市に斬られるのが残念。腕の立ちそうな風貌だけに、もう少し座頭市との対決シーンには時間をかけてほしかったところです。

花火師(左卜全)と勝新のおとぼけ対話シーンが何度かあり、全体の雰囲気に独特の味を添えているところは、なかなかいい。
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