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キネマの天地のrumblefishのレビュー・感想・評価

キネマの天地(1986年製作の映画)
4.2
初めて見たけど、今で良かったのかもしれない。昔だったら小津安二郎も田中絹代も分からなかった。役者さんはみんな若いし、次々に出てくる人を誰やっけと思い出すのも楽しい。出川哲朗が序盤に、“江戸”はるみ、分かった様な気がする。桃井かおりは初見では分からんかったけど声で。光石研と森口瑤子は気付かなかったな。

小春、東京ラブストーリー以前の有森也実がめっちゃ可愛い。

中井貴一と有森也実というより、渥美清。さくらもご近所にいるし。
小春とのやりとりはどれもいい。
初めてセリフのある役をもらった小春に稽古をつける喜八。自身は元役者と言っても“馬の足”だった。演技についての講釈を“むずかしいものね”と聞き入る倍賞千恵子、庭で何事かと見つめる吉岡秀隆。
“こんなものはほんのシバヤのイロハじゃありませんか”

あと、ぐず屋の笹野高史との掛け合い、推しの純情娘田中心春と持ち上げてもらって、ついつい酒を勧めるが、話が妙な方向になって激怒。どれも渥美清の真骨頂。
帝国館での最後、女優小春の大成を見届け、眠るように逝く。こぼれ落ちるキャラメル。

堺正章、“西部戦線異状なし”ならぬ“全部精神異常あり”

小倉組のローアングルなんて、ああやって見せられると笑ってしまう。小津安二郎のオマージュとのこと。
“おやじ、乗ってるよ~”
そういや、小春が最初にセリフをもらった鰻屋の女中のシーンも、完成したフィルムはもろ小津のカットだった。

終盤、小春は大作「浮草」の主演に大抜擢。最後の重要なシーンが上手くできない。演技に悩む小春に、行き掛かりで出生の秘密を話してしまう喜八。小春は憑き物が落ちたように最高の芝居をみせる。
小倉監督“アホ、できるやないか、そんでええ”

最後は蒲田まつりで蒲田行進曲を歌って大団円。何度見ても楽しい。