キヲシ

丹下左膳 怒涛篇のキヲシのネタバレレビュー・内容・結末

丹下左膳 怒涛篇(1959年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

多幸感に溢れる大友柳太郎の丹下左膳、その第二作目。監督は松田定次と松村昌治、脚本は中山文夫。松田はマキノ雅弘の異母兄弟で、ともに面白い作品を大量生産。正に映画の申し子。さらわれたちょび安(松島トモ子)とお藤(長谷川祐見子)を探して、左膳が右から左へ走る走る走る。二人を呼ぶ左膳が立ち止まる姿の俯瞰…。始まりは将軍(里見浩太朗、出番は少ない)、大岡越前(月形龍之介)、隠密愚楽老人(薄田研二)の密談から。与吉(多々良純)が埋蔵金の鍵となる香炉を盗み、逃げる逃げる逃げる。再びの戦乱を企む鈴川源十郎(山形勲)と長崎屋(三島雅夫、前作から正反対の悪役がお見事)の手下が追いかけ、貧乏長屋を一軒々々通り抜けて、老人(左卜全)とお艶(櫻町弘子)、蒲生泰件(大河内傳治郎)が登場。この香炉をきっかけにちょび安を引き取ることに。左膳とお藤の心が動くとカメラがぐぐっと寄る。与力伊吹大助(大川橋蔵)と左膳の対峙からのイチャイチャも再演。前作ではやり取りや台詞が二度、今作では三度繰り返される?たぶん。長屋に潜り込んだ伊吹が侍言葉の「拙者は…」を口にしてしまうとか、伊吹とお艶、伊吹と弥生(大川恵子)も三度ずつの挿話でそれぞれまとまる。この長屋が皆貧しいながらも、恋する二人を暖かく見守り、老人の快気祝いに祭りで盛り上がるなど理想郷。伊吹と左膳の大立ち回り(大友柳太郎が段取り無視するので殺陣では受け手の生傷が絶えなかったという説あり)が見応え十分。ただ、さすがに二人だけではちと苦しいか…泰件を先頭に長屋の面々が、御用提灯の群れが、わーわーおーおー走る走る走る。そして、そのまま、埋蔵金探しの船旅へってワンピースかよ!この映画は昔にテレビの深夜放送で見て泣きそうになった。やはり面白いわ。
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