むるそー

愛と哀しみの果てのむるそーのレビュー・感想・評価

愛と哀しみの果て(1985年製作の映画)
1.5
デンマーク出身のお嬢様がビジネスパートナーの夫とアフリカに渡り、原住民を労働力にプランテーションの経営を始める。大自然の中での愛と哀しみの果てに、彼女は何を見るのか。

とにかく壮大!荘厳!!雄大!!!風景も音楽も演出も特大スケールで、アメリカ人に対するステレオタイプもあながち間違ってないんじゃないかと思うような、いかにもハリウッド的な作品。

40年も前の作品なので今とは倫理観にズレがあるのは仕方ない。あまりにも白人中心の内容で、アフリカ系に対する"配慮"も、上の者が下の者に対する表面的な憐れみでしかないことに時代性を感じる。アフリカの自然や民族音楽はリスペクトしつつ、当のアフリカ人は眼中にないのがなかなかグロテスクだなと笑ってしまった。

人の手の加えられていない雄大な自然。その描き方も今評価されている映画とは少し違っているように感じた。例えば去年の年末に日本公開されたファーストカウでは、自然と人間はひとつ距離を置いた対等な関係だった。しかし今作では2人乗りの飛行機で草原の上空を支配的に飛ぶ。これは意図したものというよりは透けて出たものだろう。アフリカ人も自然もすべて自分たちの手中にあるかのような当時のハリウッドの傲慢さが表れている良いシーンだ。

メリル・ストリープ演じる主人公の浅はかさも人間臭くて好きだ。原住民も農園も夫も彼女にとっては所有物。お金を使えば何でも思い通りに動かせると信じている彼女の一挙手一投足が見ていて滑稽だ。梅毒にかかり子供を産めなくなったら原住民の学校をつくって子育ての代用をする。家事で全てを失った後の彼女が、急に"アフリカは本来彼らのもの"とほざき始めたり使用人に付けさせていた手袋を脱がしたり、もはやギャグなんじゃないの?ってくらい一貫性のない行動はどうやら観客を感動させに来ているらしい。そのことに感動した。

でも思慮深くなればなるほど人間は何も行動できなくなるから、彼女くらいの浅さは自分の人生の舵取りをするのにはベストなのかも知れない。そして彼女の不倫相手は結構僕の価値観と似ていて、奔放な行動をして普通の人生を歩む周りを馬鹿にしつつも、自分は衣食住など恵まれた暮らしをしている恥ずかしさ加減も僕と似ていた。だから最後死んじゃって少し悲しかった。

その年のオスカーを取った作品を見れば当時のハリウッドの"正解"が分かるから、そういう指標的な側面でも価値がある。作品賞受賞作はいつか制覇したいな
むるそー

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