佐藤克巳

石中先生行状記の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

石中先生行状記(1950年製作の映画)
5.0
「まごころ」「春の目ざめ」と並ぶ成瀬巳喜男監督の、青春爽やか路線は私の好みだし、藤本真澄「青い山脈」番外篇の趣きを持つ、石坂洋次郎自身を思わせる石中先生宮田重雄の岩木山周辺の村、弘前市を舞台にしたスケッチ風オムニバス映画の傑作。第一話隠退蔵物資の巻は、林檎園に軍が埋蔵したドラム缶を巡りガソリンで一儲けを企むランプ屋渡辺篤が、林檎園娘木匠久美子逢いたさにそこに埋めたと虚言する青年堀雄二に幻惑されたと、立会人石中先生が見破る。第二話仲たがいの巻は本屋娘杉葉子の父藤原釜足と恋人池部良の父中村是好が、ねぶた祭りで賑やかな弘前の町には珍しいストリップショーを観るが、誘いはどちらかで両親子とも反目するが、仲介の石中先生が私も明日観に行くで決着。「青い山脈」杉、池部の後日談か?第三話千草ぐるまの巻は、岩木村娘若山セツ子が、町に姉のお見舞いに行って今日明日に運命の人に出逢うと手相に出た。姉から小遣いを貰い映画を観るが、なんと「青い山脈」の眼鏡の自身と云う洒落っ気。茶店の前の馬車で一眠り。馬車の引き手が三船敏郎に変貌。その母飯田蝶子の招きで一夜。無言だがお洒落した三船と村祭りで意気投合。翌朝、石中先生の保証書付きで帰る途次、三船と若山が青い山脈を唄う。先生は、一目惚れの三船に家まで送るよう助言すると一目散に若山を追う。終始、若山の笑顔満面、元気溌剌が素晴らしい。
佐藤克巳

佐藤克巳