「紙の花」
冒頭、曲とともに老人の回想が始まる。
幾つかのエピソード、1人の男がスタジオの中へ入っていく。ここは映画を作る場所だ。人気映画監督、離婚、親権、看病、シルエットで見せる人物像、悲劇的な始まり、救われない帰結。
今、妻子がいる身なのに主演女優との不倫を疑われ転落していく1人の男の物語が始まる…
本作はグル・ダットの「渇き」に次ぐ傑作ラブロマンスで、この度初見したが素晴らしい。
本作は監督の半自伝的作品らしく、この作品で監督と言う仕事に見切りをつけた最後の映画である。
さて、物語は ボンベイの人気映画監督であったが、私生活が恵まれなかった監督が妻との仲が冷え込み、別居状態であり娘とも中々会えない状態。
そんな彼を軸に物語は悲劇的な結末えと迎える。インド映画界を転落して行く男の模様を映す…と簡単に話すとこんな感じで美しく残酷な映像美とともに半自伝的な作品を観客に見せつけた名作である。
教員の女性が数字に対して講義をする子供たちのシークエンスはすごく面白くて印象的だ。
ここでも歌や踊りがあったり一人芝居があってとても心温まる場面だ。
インドの可愛らしい子供たちの笑顔も素敵だ。そしてラスト突風が吹く描写は切ない…歌も。
とりわけ、私が見た3作品では光と影のコントラストが非常に美しく、言わば"光線"を特徴に映しているのがわかる。
選曲が8分近くもあってものすごく長いが、情感あふれるピアノ演奏が我々観客に美しい人時と残酷な事柄を目撃させる。
にしても女優のワヒーダー・レヘマーンの美貌は神々しくなんて妖艶なんだ…。
映画のスタジオのカットバックはとんでもなく素晴らしいもので、監督の天才ぶりがわかる。
余談だが、この作品は公開時にインドの副大統領を迎えて寛大に行われたらしい。それなのにインド初のシネマスコープ作品で制作費がかかったにもかかわらず、興行的には失敗して記録的惨敗となったらしい…こんな傑作が。
監督自体これに関して非常に精神的に苦痛を味わったらしく、監督作品を撮らずに自死したらしい…。