紙の花の作品情報・感想・評価

「紙の花」に投稿された感想・評価

映画詩人(映像詩人に非ず)の映画遺言(映像遺言に非ず) グル・ダット「紙の花」

この作品の存在を知ったのは25年ほど前。
知らしめてくれた蓮實重彦の映画評から観たくて観たくてしょうがないのに今日まで巡り逢うことないまま年月が流れましてついに鑑賞が解禁され観終えた今、何故かくもこのような年月が必要だったのかが分かる気がしました。
私自身の怠慢ゆえではございません。
こんな映画20代のガキの頃なんかに観ても100分のイチも咀嚼できません。
観るべき時期に向こうから近づいてくれたに他なりません。
初老に差しかかる今になって初めて味わえる「驚き」がいかにも自分だけに与えてくれた特権のような気がして隠匿と推薦の欲望が同時に体内に宿して心地よい困惑を味わっております。

という戯言でさえご都合主義の神様グル・ダット作品なら温かく受け止めて下さる気がいたします。
adam

adamの感想・評価

4.8
1959年の白黒インド映画。さらには2時間超えなのに非常に観やすい。悲しくて愛おしい、グル・ダットの遺作。甘いも苦いも吸い尽くし、待ち侘びたかのようにあの場所で昇天するのか...光が射すラストショットに鳥肌。インド映画らしい?音楽は少しクドイが、ストーリーとセリフのチョイスに胸をえぐられ、涙が止まらなかった。
roland

rolandの感想・評価

5.0
レオス・カラックスの選ぶ15本②


最期まで映画を信じ続けた結果、来るべき自死すらもが映画のなかで予言された。人生は、いつか映画に飲み込まれる。

あまりにも美しいものを見つけたとき、その美しさゆえ自分には二度と手に入らないことが同時にわかる、また目を逸らす...
映画監督の映画。泣いた。
真っ暗な撮影所に差す一点の光が忘れがたい。
クロ

クロの感想・評価

4.7
いい映画だった。骨格はメロドラマだが、恋に落ちる二人がどこまでもお互いを思いやり優しさを失わない。そしてつつましさを貫くがゆえに二人は添い遂げられない。監督は実生活のワヒーダー・ラフマーンとの悲恋をひきあいに出しており、その孤独を詩情豊かにそして深い悲しみと諦念を湛えて描く。シャンティはとても美しく、茶目っ気が有り、しなやかさと芯の強さを備える女性で、監督への情熱を静かに抱き続ける姿が素敵だった。ミュージカルの要素は制作会社の強要だったらしく、虚構と現実の監督の姿が重なり一層悲哀が募る。
秋日和

秋日和の感想・評価

5.0
妻と上手くいっていない人気映画監督がある日、運命的に一人の女と出逢い、しかしその出逢いが引き金となって子供との関係も女との関係も悪化してしまい、最終的にエキストラにまで落ちぶれてゆく様を描いた古典インド映画の傑作。
インド映画(ボリウッド映画)といえば、「歌って・踊って・とにかく長い」という印象が一般的であると思うし、加えて全体のトーンは「明るい・お気楽・ノー天気」な作品が多いと思うのだけど(あまりインド映画を観たことがないのでイメージで物を言ってます。でも、恐らく多くの映画ファンの頭に真っ先に浮かぶのは『きっと、うまくいく』、『ロボット』、『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』辺りなのではないかなぁと)、本作はその中で「歌って」と「長い」にしか該当しない。「明るい」よりかは「寂しい」し、「お気楽」さも「ノー天気」さも(お気楽でノー天気なキャラは一人だけいるけれど)殆どと言って良いほど描かれていない作品だ。
一人の男がポツンとだだっ広い撮影所に佇んでいるショットや階段をトボトボ登っていくショット、そして監督専用の椅子にソッと腰を下ろすショット等、印象に残るショットは「一人ぼっち」の状態を示すものが多かった。次いで多いのは「男女が二人きり」でいるショットで、このショットが輝かしいものであればある程、その後に控えている「一人ぼっち」のショットが効果的に響いてくる。明かりのついていない暗い撮影所にパッとつくスポットライトがもの悲しく、そして美しく男や女を照らしているのを遠景で捉えたショットはこの映画の魅力を最大限に伝えているだろう。
しかし、こんなにも「ショットが!」と(ここまでで8回「ショット」が登場した)馬鹿の一つ覚えのように連呼しているけれど、実は本作で一番沁みたのは男が女を見上げ、女が男を見下ろす、といったあまりに単純な2カットなのだ。けれどその時の男と女の立場・関係性のことを考えると、あまりにも強烈であまりにも哀しい2カットだと思う。
今となっては随分名の知れた監督となったグル・ダットだけれど、当時はヒット作に恵まれず、本作を撮った後は映画を離れて自ら命を絶ってしまったそうだ。だからこそ、この映画は哀しいし、先に挙げた2カットは残酷だと感じてしまったのかもしれない。もし、今才能があるにも拘らずなかなか映画を撮らせてもらえる状況にない監督がいたとしたら、なんとか協力したいのだけど、それも難しいよなぁどうすることもできないよなぁと改めて思ったのでした。近々、『55年夫妻』(ロマンティックコメディだそうです)も観てみようかな。