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ディパーテッドのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

ディパーテッド(2006年製作の映画)
4.3
Apr. 24th

Martin Scorsese監督作品
Leonardo DiCaprio主演作品
Matt Damon, Jack Nicholson, Mark Wahlberg主演
Michael Ballhaus撮影監督
Thelma Schoonmaker編集
Howard Shore音楽
2006年アカデミー賞作品賞、監督賞、編集賞、脚色賞受賞

死者を見る目はそれぞれ違う。

素晴らしい映画ですねー。Martin Scorseseらしさがとてもわかりやすく出ていた。サスペンス要素が入ったこういうクライムドラマ映画はリアリティを追求し、そのなかでどうやって視聴者にキーオブジェクトをとらえさせるのかが大事だと思っていた。しかし、この映画は、ストーリーは他の作品とそれほど変わらないのだが、プロダクション以降の映画の特徴とも言える部分で、現実とはかけ離れた演出が光っていた。

撮影では、Michael Ballhausが毎回彼の作品で新たなことを試している印象だが、この作品では、カメラワークのスピードのバリエーションがとても印象的だった。キャラクターのリアクションが最前面に出てくるところで、驚くほどドラスティックなカメラワークを見せる。キャラクターをぐるりと一周してみたり、ドリーインのスピードが急に早くなったりと、まさに映画らしいことをやって見せた。最初は、なんだかチープな作りになっちゃいそうだなーと思っていたが、そこはMartin Scorseseと長年やってきた共通理解というものがあるから、ディレクティングとばっちしはまっていた。

そして、Martin Scorsese監督作品としてはずせないのが、Thelma Schoonmakerの編集。他の編集者とは異質な存在の彼女。シームレスなカットというよりも、いかにストーリーの起伏を激しくするかというところに注力している。多くのところで見られるコンティニュイティのずれも、この映画にとってみればそこまで重要なことではない、そこで視聴者をちょっと引き離してしまったとしても、他のシーンで倍以上のパワーで引き戻すことができる。特徴的なのは物のCUの多さ。キャラクターが視線を落とし、何かを見るシーン、もしくは観客に見て欲しいシーンは怖がらずにCUを使う。しかも同じCUをなんども使う。これはかなり恐い手で、一つ一つのクリップが長すぎるとかなり損失が大きいダメージとなる、しかし、彼女のCUは短い短い。特にこの作品は、サスペンス要素が合間って緊張感を表すようなCUの短さ。文字も書いてあるが、読めるか読めないかギリギリのライン。時には、10フレーム以下で連続でCUが映し出されるシーンもある。観客の意識にとまる必要はないが、目に入れさせるというために使った技法。CUがあることで、キャラクターの感情が強調され、豪快な波が生まれていた。
さらに、この映画では、二人の主人公のインターカットがめちゃくちゃ美しい。テレビドラマみたいに、ただ行ったり来たりするのではなく、関連性を持って相互に移動する。時には時間軸をずらしたり、片方のセリフはそのままに、VOの形でもう一方のシーンに写ったり、視聴者に考えさせる。いまはどっちのシーンなのかと考えるだけで物語が進むようになっている。つまりは、前どんなシーンがあったっけ?と考えなくていいようになっているのだ。サスペンス映画では画期的な方法だろう。

素晴らしい俳優陣。
こういうサスペンスクライム映画は0から1を作るような芸術性。まったく何も知らずにこれを見ても、みなが同程度の興奮を味わえる。彼のフィクション作品にはそういう力がある。
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