映画の道化師KEN

ファイト・クラブの映画の道化師KENのネタバレレビュー・内容・結末

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

痛みから生まれる自由と解放!

監督は「セブン」のデビッド・フィンチャー。主演は「Mr.&Mrs.スミス」のブラッド・ピットと「インクレディブル・ハルク」のエドワード・ノートン。加えて、「PLANET OF THE APES 猿の惑星」のヘレナ・ボナム・カーター、「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャレッド・レトらが共演する!

心の中に問題を抱えるエグゼクティブ青年ジャックはタイラーと名乗る男と知り合う。ふとしたことからタイラーとジャックが殴り合いを始めると、そこには多くの見物人が。その後、タイラーは酒場の地下でファイト・クラブなる拳闘の秘密集会を仕切ることに。たくさんの男たちがスリルを求めて集まるようになるが、やがてそのクラブは恐るべきテロ集団へと変貌していく…

チャック・パラニュークの同名小説を映画化。不眠症の青年ジャックと石鹸を売り歩く男タイラーの殴り合いをきっかけに結成された拳闘集会「ファイト・クラブ」が過激なテロ集団へと変貌していく過程を描いたクライムスリラー!

消費主義社会に異議を唱えた本作は「モノ」に踊らされ、企業の消費奴隷と化した人々の解放を訴えかける社会派ドラマであり、企業やメディアに隠れるサブリミナルの洗脳に警鐘を鳴らした一本!

物質至上主義に支配された主人公ジャックが殴られる痛みを知ることで生きているという感覚を取り戻し、社会に挑んでいく様を見ていると生きる意味やその価値を深く考えさせられる。金やモノ、地位や名誉に縛られ、本来解決しなければならない殺人、犯罪、貧困などの問題には無頓着な現代社会。消費社会を痛烈に批判するタイラーの思想に感銘を受けた者も多くいるだろう。だが、精神的自由の解放が暴力や破壊を肯定する野蛮なテロリズムに成り下がるという皮肉な展開には人間の性が滲み出る。「ファイト・クラブ」で消費者=奴隷からの自由を求めていた男達が思想の奴隷になってしまうとは何ともやるせない。

しかしながら、最終局面で主人公ジャックが求めた自己の精神の自由とタイラーが求める社会全体の精神の自由がぶつかり合い、ジャックとタイラー2つの人格が統合する。それはモノや思想、自身にも縛られない真の自由な自分に生まれ変わった瞬間だ。これこそ、人々が求めてやまない、生きているという実感ではないだろうか。私達が真に殴り合うべき相手は消費社会や思想でもなく、それらに縛られ続ける自分自身なのかもしれない。

余談だが、サブリミナル効果を利用した描写が劇中に張り巡らされており、タイラーが一瞬だけ映りこむ、シーンがいくつもあるので探してみよう!