なつふじ

ファイト・クラブのなつふじのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.1
「出たダークナイト。男は好きだけど女は面白くない映画No. 1」という有名なセリフがあるけども、個人的には、ダークナイトよりも本作の方が、男のロマンというか、男のための映画のような気がする。
つまり、男のための代行リストカット映画である(反対に、女のための代行リストカット作品が『SATC』や『ハッピーマニア』だろう)。

ほとんど似たようなテーマを扱っている『アメリカン・ビューティー』が同年…どころか同月に公開されているのは、優れた映画人の感性の鋭さとそのシンクロニシティに、もう鳥肌が立つ思いなのだけれど、まだアメリカンビューティーの方が、ユニセックス的な"実存"にテーマが当てられている気がする。
しかし本作はあからさまに、「カネとモノで去勢された男性性を取り戻せ!」と叫ぶ。
アメリカンビューティーのオッサンには成し遂げられなかった、セックスとバイオレンスがここにはある。
ここまで堂々と厨二病的なマッチョイズム(男根…というよりもはや睾丸主義)をやられると、ジェンダーフリーが叫ばれる現代に見ても、ある種の清々しさを覚えるね。ダッサい予防線も張らず、ここまで裸一貫で徹底的にやってくれたら、もう何も言えんわ。

しかし、自分は「出たダークナイト。男は好きだけど女は面白くない映画No. 1。……うちでSATCのDVD一気観してたほうが何百倍も楽しいわ」の派閥の方なので、刺さりはしなかった。

(反対に、ファイトクラブが刺さりまくる女性も多くいるだろう。そして彼女たちは、男に生まれられなかったことを悔やんだのではないだろうか)

でもたぶん、一番の刺さらなかった原因は、男性脳が足りなかったことではなく、ミステリ脳だったせい。ネタバレになるから詳しくは言えないけれど、POVスタイルでもない限りそのトリックはアンフェアだし、誰の視点なんだよ、って気になって、話に入り込めなくなる。
だから原作の方が筋が通っていて好き。

映像と台詞回しとブラピは超かっこいいけどね。
個人的には、序盤の互助会通ってるあたりが一番好き。センスあるわ。

ところで思ったのは、暴力描写って、好みがあるんだなぁと。デヴィッド・フィンチャーの暴力描写ってたぶん人気があるんだろうけれど(ここが楽しめる人は男女関係なくハマれるだろう)、個人的には快感を感じなかった。北野武とかタランティーノの暴力描写は大好物なんだけど。
どこに好みが差が現れるのだろうか……
なつふじ

なつふじ