ちんねん

悪人のちんねんのレビュー・感想・評価

悪人(2010年製作の映画)
4.3
8回目くらいの鑑賞だが、本当に毎回別の仕方で心動かされる。
制作の目線に立ってからは初めての鑑賞だけど、ちょっと本作はひいては見れないものがあって。

やっぱり柄本明の「大切な人はおるね」の映画だと思う。
悪は大切な人がおること、おらんこと、にまとわりついてくるサブテーマでしょう。
大切な人、って自信を持っては言えないのよねぇ。
言えるときがある、また、増えてきてる、という感じやな、今は。

少し引いた目で見ると、
この映画は上記のような倫理的なテーマはありつつも、
妻夫木聡と深津絵里の置かれた状況の限定性・極限性もあり、後半から少しついていけなくなってしまって、柄本明のセリフも憧れのような目でしか見れないところがある。または隣で聴いていた青年のような覚悟。
『ハッピーアワー』は一緒に行ける。この違いはなんなのか。状況の限定性という点と、映像によるミラーニューロンの駆動の度合いと?


また、今回演出に目を向けると、そりゃ僕好きやわ、というものばかりであった。

カサヴェテス的な顔アップの多い演出に加え、
主観を表す、ときにメタファー的なショット群、
入念に探られたロケーションと天気により湧き上がる情感(とそれを活かした撮影、特に空間利用がうまい…)、
そして久石譲の、文字通り琴線のような部分に触れてくるような音楽。

そこに宛書きやろというくらいグイグイとあるれ出る役者陣。
今回見るまで(高校生のとき以来)、無意識に妻夫木聡=清水祐一だと信じていたし、深津絵里はほんとうに清水祐一と愛し合った人だと思っていたくらいだ。
ちんねん

ちんねん