Siegward

誰も知らないのSiegwardのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
3.9
本作のタイトルの意味は、

① 無戸籍ゆえセーフティネットから漏れて“誰も知らない”
② 都会的な無関心から深入りせず
  “誰も知らない”(知ろうとしない)
③ 育児放棄が社会問題として広く認識される前の事であり、
  子供達が置かれた状況を“誰も知らない”(想像できない)

という辺りを含んでいるのかなと思う。


是枝監督らしい『家族』をテーマにした社会派映画。ドキュメンタリー畑出身のカラーがまだ強く、今ほど映画として洗練されていない所をちょっと減点。

逆も然りだが、子は親を選べない。

悲惨な話ではあるものの、不釣り合いに優しい音楽と美しくも繊細な映像で淡々と日常が映し出される。

この作品を見て「なぜ周りの大人は何も気づかない?」と現代的感覚で引っ掛かる人も多いようだが、元の事件はもちろん、上映当時は『ネグレクト』という概念はまだそこまで一般化しておらず(00年施行児童虐待法が初出)、違和感こそあれど救出の必要な惨状を推測し行動できる人は限られたはず。

都市部を中心に人のつながりが分断され、また結婚や家庭に縛られない女性の自由という考えが広まる過渡期において、不幸にもこうした事件が起きてしまったのだろう。

今だとさっさと通報する人が増えたから、その頃より児童虐待も未然に防止されやすくなったのは幸いだ。だが最近も大津でジャングルジムの事件があったように、決してなくなった訳ではないのがやるせない。
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