タナカリエ

誰も知らないのタナカリエのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.8
2004年公開の映画ですが、
常にきっと世のどこかにある生活を切り取ったような映画だからか、古さも新しさも感じない。


公開当時12歳の私は、父親に連れられて
シアターでこれをみました。
私と2つしか変わらない柳楽優弥くんが
日本で、世界で評価されている、という現実に
特別な人間と、そうでない人間の格差を感じたりした思春期。(笑)


有名な話ではありますが、台本は子どもたちに渡さず、口頭でセリフを伝えていくことでリアリティを追求したというこの映画
大人達も名だたるメンバーですが
大人達の演技が浮いて見えるほどに子どもたちの演技が現実的です。




時間軸の動きを在り来りな天気、服装、街並みで見せるだけでないところもとても好きだった。

母親に塗ってもらった赤いネイルが剥げてもうほぼなくなっているカット

カップラーメンの容器に種を植えて植物を育てていたのがたくさんの数に増えて、植物達もよく育っているカット
(このシーンに関しては、子どもの真っ直ぐな気持ちと育ち、植物の陽を浴びて真っ直ぐ育つところがすごくマッチして、輝いていた)



様子をしらない大人達の悪気のない優しさで
今日を生き延びられてしまう子どもたち。
何も支援も協力もされなければ正しい行政の支援があったかもしれない。
無知である、知ろうとしない。
子どもたちの様子を見たのに目をそらす大家をはじめとした
絶対に気がついているであろう大人達の無関心が
画には1度も映されてないのに、感じ取れる。

なんという表現力でしょう。


柳楽優弥くんはそりゃこのあとどうして行けばいいのか分からないくらいの名演技をここでしてしまって
とんでもない人生ハードモードの始まりだったのだろうな、と思います。

自分も音楽家としてある程度評価された次の演奏や作品というのは
なかなかにプレッシャーがある。
それが日本人初受賞、なおかつ最年少受賞となればなおのことだろうな、と。

何度見ても古くもなく、新しくもない。
報われるわけでも感動の涙を流す訳でもない。
「そこのみにて光輝く」のレビューでもいいましたが、こういう映画は大好きです