TakayukiMonji

気狂いピエロのTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

気狂いピエロ(1965年製作の映画)
3.9
ゴダールマラソン。

「勝手にしやがれ」と同じくらい有名なゴダール。このマラソンを機に初鑑賞。
ゴダール作品、シナリオの面白さを探求するタイプの自分の好みとは真逆にいることを再認識させられる。だから敬遠してたけど、回を重ねるたびに、感じ方も何となく掴めてきた。

愛の逃避行、主演2人の輝き、青と赤の鮮烈な色合い、ブツ切りされる音楽、時間軸を組み合わせた構成、急に変わる衣装、観客へ語りかける俳優たち、喜劇と悲劇などなど、あげればキリがないが、やりたいことを自由に作りましたという映像と音楽と台詞のコラージュ。やはりヒップホップやダブみたいな音楽的なトラック制作の編集手法を彷彿とさせる。

特に、序盤の部屋で死体が転がってるシーンはすごいと思った。現在と少し先の過去と未来をオーバーラップさせてるシーンで、これはクリストファー・ノーラン好きにはたまらない。半世紀以上前に、”これをやっていることがすごい”という評価になる。(これが物語の面白さに繋がってるわけではないが、)
夢と妄想と記憶が入り混じるかのような感覚。

ちょうどこれ以前の作品を網羅し、この後の作品は「ウィークエンド」だけ先に鑑賞したが、ちょうど本作が分岐点になっているのがよくわかる。これまでのゴダール×アンナの私生活を投影したような男女間のやり取り(全く噛み合わない非応答なやり取り)に実験的な要素を組み入れたスタイルはそのままに、政治的な要素、人が死んでいるシーンの血の嘘っぽさや車がクラッシュしているシーンもそのまま「ウィークエンド」にも踏襲されているのがわかった。

アメリカ批判もそうだし、男女間は決して噛み合わないことの皮肉、脚本を無視した即興スタイルも、挑発的な感じがゴダールの良くも悪くもの部分だなと。
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