すえ

気狂いピエロのすえのレビュー・感想・評価

気狂いピエロ(1965年製作の映画)
5.0
記録

どうしようもなく好き、そんな映画がある。それが『気狂いピエロ』。ゴダールにしか撮れないし、ゴダールしか撮らないような映画。

ゴダールは話の筋が成り立っているようで成り立っておらず、観客が補い自分自身の中で答えを出して初めて完成する印象が強かったが、今作はある程度話にまとまりが出ていた。謎を抱えたまま映画は進むことで、観客はサスペンス状態に陥り、展開が読めないから飽きずに観られる。ゴダール作品は、抽象度が高すぎてよく分からないまま進み、眠りに誘われることが多いが、今作は違ったようだ。

ジャン=ポール・ベルモンドやアンナ・カリーナから放たれる言葉ひとつひとつは、そのまま空中を漂うような抽象性を纏っていて、自由気ままに飛び回る。やること語ることが何にも縛られていない、自由奔放すぎる映画、即興的ともいえる。

古典的ハリウッド映画を嘲るようなショットに痺れる。会話の切り返しショットなど使う必要がないのだと、目線で語る。話している主体と、話を聞く客体の存在が、視線で顕になる。
また、映画それ自体を異化させようとするような試みもみられ、登場人物がこちら(観客)に語りかけてくる。この時代に第四の壁を破ろうと、ベルモンドとアンナ・カリーナはカメラを見つめてくるのだ。どれほど革新的で面白い試みだっただろうか、時が経った今も古く感じないわけだ。

ベトナム戦争についてのシニカルな笑いが大好き。

2023,276本目 10/22 DVD
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