宝石強盗の容疑をかけられた資産家が自殺。その遺書は自分の一族の中に悪魔がいる、と告発していた。
やがて、資産家が生前制作したフルート曲「悪魔が来たりて笛を吹く」の旋律に乗って資産家一族が次々と殺されていく…。
ご存知、横溝正史の最高傑作『悪魔が来りて笛を吹く』を映画化。
金田一耕助映画は東宝版の石坂浩二が有名だが、こちらは珍しい東映作品。
梅宮辰夫叔父貴がちょい役で出演してますが、さすが東映。
そこん所だけ実録ヤクザ映画のような演出。
基本、謎解きミステリーですが、描かれるのは金田一耕助映画の中でも屈指の残酷な悲劇。
あまりにも救いのない犯人の人生には胸にこみあげるものがあります。
ただ、実際にあった「帝銀事件」を元にした、大量毒殺事件から始まる出だしはなかなか派手ですが、メインの密室トリックはショボイし、途中で中弛みもします。
有名な作品の割にあまり映像化されないのは、内容に救いがあまりないとかモラル的に問題があるということもあるんでしょうが、八つ墓村や犬神家みたいな絵になるシーンや活劇的な部分が少ないことが大きいと思います。
また、複雑な人間関係を実写映画で作るのはやはり相当に無理があるようで、1つ単語が聞き取れないとそのままずるずると分からない知識が増えていく。
そういった意味で、惜しい作品だなと感じました。
ちなみに、映画のタイトルでもある劇中のフルート曲は、原作ではまさに最後の最後で、何故その曲が作られたのか、衝撃の事実が明かされるんですが、映画ではバッサリカットされているためタイトルがあんまり意味のないものに…。
さすが東映。
適当だ。
西田敏行さんの金田一は、チャーミングで優しくて、とても素敵な金田一でした。