Jeffrey

股旅のJeffreyのレビュー・感想・評価

股旅(1973年製作の映画)
3.0
‪「股旅」‬
今年は多くのATG作品がBD化され嬉しい。今月は市川崑の「股旅」と黒木和雄の「祭りの準備」が発売。何方も素晴らしい作品で市川は唯一のATG作で黒木は日本の悪霊、原子力戦争、とべない沈黙がBD化すれば完璧。篠田正浩、大島渚、新藤兼人らの作品を出して欲しい。後、森弘太の河 あの裏切りが重くも…
‪冒頭、畳み掛ける激しい太鼓の音色。十九世紀、渡世人。三人の若者、旅に出て茶を飲み、飯を二杯食べ、戦さ、山脈を背景に歩き、父殺し、蛇のバチ、雨、破傷風…本作は市川崑が初めてATGと組んだ最初で最後のギルド作品で今迄金がある会社から多く作品を出していた彼が一千万映画であるATGで大胆に時代劇、青春群像劇を撮った事に驚くばかりだが、何かしらの理由があったのだろう…。股旅を観ると百姓よりかはヤクザのがマシと思って生活してる分、喧嘩するや何処か弱々しく腰抜け感漂う…そんな青年達の物語は生まれ故郷を離れ渡世人となった源太と信太と黙太郎の三人の若者が世話になった家に義理として田舎者同士の喧嘩に参戦するも痛み分けで終わる。続いて田沢宿で世話になるもそこに同宿した男のが銭が自分らより高いと知り不満気になる。そして河原での対決、次に廃屋へ。そこから親殺しをし逃亡者になった三人を待ち受ける運命を映す。いや〜なんとも寂しい空気で幕を閉じるんだ…源太役の小倉一郎はヒポクラテスたちで初めて知った役者なんだがハンサムだ。三人がただ桶に汲んだ水で足を洗うシーンだけでも時代劇らしい音楽、市川による積み重ねカットが映える。また真赤に染まった夕日を背景に、雪降る荒道を歩いてく描写に尺八を聞かせた演出と山や木々が一層孤独な旅を強調させ哀感。しかしオールロケーションは凄いよな。にしても主人公三人のこんな心情の孤独を浮き彫りにした作風は中々無い。死に行く彼らを傍観する者も居なくただ世の中の無関心さを実感させる点は個人的には評価できる。娯楽を剥奪された彼らの極楽は一体何処にあるのか…源太の故郷へ帰るとそこには家族の姿はなく、売られた弟がただ居て兄に石を投げるこの残酷な状況…堪らなく寒く寂しく冷たい。それに一人前の渡世人にも結局なれず人殺しをし、途中から共にした女も売り飛ばし最後には簡単に◯◯でしまう…無様は言い過ぎかもしれないが、その無様な中に義理人情とは何かを提示してくれた市川崑には拍手喝采だ。‬
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