酢

ホンジークとマジェンカの酢のレビュー・感想・評価

ホンジークとマジェンカ(1980年製作の映画)
3.3
カレル・ゼマンの遺作。メルヘン節は健在ながら、全てのバランス調整が少しずつ狂ってきている。原作不在なのも大きそう。表現力の衰えがないだけに、老いて歯止めの効かなくなった映像詩人の脳内を直に覗いているようで、再見しても中々な緊張感があった。

主人公を見守る小人たちは神からの使い。恋に落ちた相手はおとぎ話世界の住人。悪魔の力を借りて、ドラゴンを倒した先にある城を目指す。ちょっと要素が詰め込まれ過ぎなんだよなあ。妙に煽情的な電子音BGMも気になる。シニカルなユーモアは過去作だったらもう少し手加減があったような。最後の描写からは「愛は奇跡!」なメッセージを次世代の子供たちに伝えたいんだ、とゼマンの魂が叫んでいるのはわかる。わかるが……。
酢