とむそーや

いつか読書する日のとむそーやのレビュー・感想・評価

いつか読書する日(2004年製作の映画)
4.2
2005年公開邦画ラブロマンス。朝は牛乳配達、昼はパート、夜は読書をする50歳独身女性・美奈子は、いま住んでいる街を離れられない理由があった。昔付き合っていたが親同士の不倫により仲を引き裂かれてしまった同級生高梨のことが未だに忘れられず、密かに想いを寄せていたのだった。一方高梨は死を宣告された妻容子の看護をしつつ役所で働いていた。実は彼も密かに美奈子を想っていたのだった。


もののけ姫のエボシの声優としてお馴染みの田中裕子さんの代表作のうちの1つと言っても過言ではない作品だと思います。当時の年齢は47歳ほど。一見すると普通の中年女性なのに、映画のところどころで見せる彼女の美しさが本当にすごいです。魅力が溢れまくってます。

ひとりで生きていくことを決意した彼女。でも密かに想いを寄せる高梨の存在。朝の牛乳配達という手段を使って毎日少しだけ近づく美奈子。その想いをこっそり感じ取り飲みもしない牛乳を受け取る高梨。そんなふたりの些細なやりとりを実は勘づいていた高梨の妻容子。小さな街で繰り広げられる3人の繊細なやり取りは、観ている側の心を静かに揺さぶります。

「ずっと、思ってたこと、したい」
「ぜんぶして」
2人の空白の時間を埋めるかのようなあのラブシーンは胸が熱くなります。

時間が経つほど深くなる心の隙間を埋めるかのように本棚を埋めていく美奈子。映画を見終わった後に初めて、このタイトルにある「いつか」という言葉の深さに気付きました。

哀愁漂う素晴らしい作品です。ちょっとカラマーゾフの兄弟借りてきます。
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