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インディアン・ランナーのbroccoliのレビュー・感想・評価

インディアン・ランナー(1991年製作の映画)
4.2
すべてを受け入れ諦観する兄と、
すべてを拒絶し抗う弟。
兄はデヴィッド・モース、
弟はヴィゴ・モーテンセン。
正反対ながらも、
どちらにも心を寄せられる。
この2人が演じる兄弟が良い。
俳優ショーン・ペンの初監督作。
役者のチョイス、音楽含め、
センスのかたまり。
ベニチオ・デル・トロも
チョイ役で出てるよ。

兄は息子として、夫として、
父として、警察官として、
責任を果たし誠実であろうとする。
包み込むような眼差しの、
デヴィッド・モース。

戦場から帰った弟は、
怒りにまかせ無軌道だが、
心の奥底に生き難さを抱え、
懊悩し涙する。
若き日のヴィゴ・モーテンセンは、
不安定な危うさと鋭さのなかに、
とてつもない色気をまとい、
この上もなく魅力的。しかし、
時に狂気を映すブルーの瞳には、
ファンであっても震え上がる。
こんな男に惚れてはいけない。

世の中とどう折り合いをつけ、
生きて行かざるを得ないか。
「奴らは問題を解く時間もくれない。」
そして弟はこうも言う。
「おれはまだ何の答えも見つけてない。」

目の前の幸せに背を向け、
走り去る弟の姿に、
「幸福に傷つけられる事もあるんです。」
という太宰治の
『人間失格』の一文を思い出す。
そしてひとり残された、
兄の悔恨と喪失を思うと、
胸が張り裂けるようだ。

※マイオールタイムベストムービーの感想を再構成しています。
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