似太郎

インディアン・ランナーの似太郎のレビュー・感想・評価

インディアン・ランナー(1991年製作の映画)
4.5
【邪悪な血筋】

中原昌也(ex.hair stylistics)が青山真治の作風について「ショーン・ペンの映画に似ている」と指摘していたが、私は微妙に違うと思う。

ショーン・ペンも青山真治もアメリカン・ニューシネマの洗礼を受けていることは確かなのだが、ペンの場合はどこか戦争後遺症でおかしくなった弟(ヴィゴ・モーテンセン)を支える兄(デヴィッド・モース)の役割がジョン・カサヴェテス『こわれゆく女』の関係性に近かった。

人間関係の軋轢が、ペンにはあるが青山真治には微塵も感じさせない。よりパーソナルな心情吐露が青山の映画にはあると思うのだが…。そこら辺はむしろショーン・ペンではなくフィリップ・ガレルに近いと思うのだけど、気のせい?

そんな本作は、70年代を代表するクセ者役者の競演がファンには堪らない一作でもある。ショーン・ペンの「あの時代」への拘りが凄まじく噴出した、作家性の強いヒューマン・ドラマ。あの淀川長治さんも絶賛した映画として知られる。

作家性云々はさておいて、本作は擬似アメリカン・ニューシネマと言うべき異色作であり、全編トラフィックやザ・バンドなどの70年代ロックが随所に使用されている。アメリカの愚行をとある田舎町に凝縮させた、文学作品のような雰囲気が強く押し出されている。

もうちょっとイビツな兄弟関係を深く捻出して欲しかった不満もあるのだが、総じて面白く観られる社会派作品に仕上がっている。脇役のチャールズ・ブロンソンがなかなか個性的な役柄で登場する。たまに通好みの役者を配置するのがこの監督の特徴なのかも。🤔…?
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