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お早ようのあのレビュー・感想・評価

お早よう(1959年製作の映画)
5.0
“Thank you madam” “I love you”と柳刃やさぐればあちゃんには思わず笑いました。小津作品は淡々としたリズムの中にあまりにも率直すぎる発言があって、その違和感が何とも面白いですね。

婦人会の会費とテレビという、あまりにも日常的な要素を集合住宅の中で交差させただけでここまで面白い話が出来ることにまず驚きですが、やはりその日常的すぎるストーリーを巧みな視線誘導で飽きさせずに見せてしまうところに小津監督の美学が輝いていました。
軒下と十字路とその向こうにある土手を、人が行ったり来たりしては、家に出入りし、それぞれのタイミングで物語が始まっていくスタイルは、まるで様々な出来事を同時進行で眺めることができるジオラマのようでした。いつまでも眺めていたくなる光景です。

中でもあの兄弟の描写が素晴らしく、現代らしく個別に作られた子供部屋が、廊下の奥でひっそりと灯りをつけている様子が、まさに二人だけの隔離された基地といった様相を呈していて、大人と子供のコミカルな対立が格段に極まっていたように思います。
あ