櫻イミト

戦争は終ったの櫻イミトのレビュー・感想・評価

戦争は終った(1965年製作の映画)
4.0
アラン・レネ監督の「二十四時間の情事」(1959)「去年マリエンバートで」(1961)「ミュリエル」(1963)に続く長編第四弾。日本ではATG配給で年に公開。

1965年のパリ、母国スペインの独裁政権打倒を目指す中年革命家ディエゴ(イブ・モンタン)の地下活動をリアルなタッチで描く。

それまでのレネ監督作品とは打って変わってとてもわかりやすいリアリズモ作品だった。ところどころに短いフラッシュ・バックとフラッシュ・フォワードが入るが良いアクセントになっている。革命家の地下活動と言っても仲間と秘密裏に連絡を取り合うだけの地道なものだが、常に尾行と連行の危険にさらされていて張り詰めた空気が流れている。そのため映画の大半を占めるパリのロケも町が違って見える。主人公は長年の地下活動に疲労と諦めにも似た気持ちを抱いている。妻と若い活動家それぞれとの逢瀬が、活動家と一人の男という二つの側面をうまく表していて共感しやすかった。それだけに、ペシミスティックなラストには人間ドラマとして感慨を覚えた。

レネ監督が難解な映画しか作れないわけではないことがわかる一本。反体制の脚本家ホルヘ・センブランの自伝的な要素もあり、そちらの色が強い作品だと思う。

主演イブ・モンタンと脚本のホルヘ・センブランは本作で出会い、後にコスタ・ガヴラス監督の硬派な反体制映画「Z」(1969)「告白」(1969)でもタッグを組む。

※本作で映画脚本デビューした作家ホルヘ・センブランは、レジスタンス活動で強制収容所に送られていた。

■作品で描かれた政治状況
1939年、スペイン内戦に勝利した右派のフランシスコ・フランコは独裁体制を樹立し「戦争は終わった」と宣言。第二次大戦後も独裁と左派への弾圧は続き1975年にフランコが死ぬまで続いた。
櫻イミト

櫻イミト