あったかい映画。
そこここで微笑みを誘い、観客を沈みこませることがない。
タイトル通り物悲しいストーリーなのだけど、鑑賞後は爽やかな気分になりました。
(今回、天池穂高氏によるピアノの生伴奏付きで観ることができたので、天池氏の力も大きかったことを付記しておきます)
いくつかの細かなユーモアは、あとで振り返ると笑うことではないよなって思うのもあったり、貧しくも逞しい登場人物たちはとても魅力的。
それとカット割りが多くて驚きました。しかもとても効果的で、この時既にモンタージュが確立されてたんだなあと。時代を考えれば当たり前なのかもしれませんが。
ドリー・インが多用されててこれもまたビックリ。どうでもいいことだけど、ピント合わせるの大変だったろうな・・・。
成瀬巳喜男監督の作品に触れるのは学生の頃以来。それも「浮雲」と、あとタイトルも忘れてしまったぐらいいい加減な記憶。温故知新。もっと古い映画に触れたいと思わせてくれる映画でした。っていうか触れろ俺!
最後に。
この映画が公開された1933年、海外ではナチスが台頭し、国内では治安維持法が牙を剥き出した頃。当時の人たちはきな臭い何かを感じていたでしょうか。そして、この映画を観て、どんな気持ちで映画館を出たのでしょうか。
聞いてみたいところです。
(2015.9.22 神保町シアターにて鑑賞)