君と別れての作品情報・感想・評価

「君と別れて」に投稿された感想・評価

この映画を観たのは、小津監督の『非常線の女』で大好きになった水久保澄子を観たかったからである。
成瀬巳喜男監督作品だからでもある。

水久保澄子は、照菊という芸者役。
不良が横行する中、知り合い学生の義雄もいつの間にか不良の仲間に入っていた。義雄の母親は芸者仲間で……(という感じで物語が進む。)

以前、淀川長治さんが成瀬監督のことを「貧乏くさい監督」と話していたが、確かに、この映画でも「サイフの中」まで映しているキャメラ。
成瀬監督は、サイレント時代からお金に関するエピソードを盛り込みながら、破れた靴下の先を黒い墨で塗るという笑える技も…(笑)
観ていて楽しい。

照菊の住まいが海のそばで海面シーンにサイレント説明文字が映されるシーンもグッド。
回想シーンも良い。

なかなか楽しい成瀬監督のサイレント映画であった。
てぃだ

てぃだの感想・評価

4.1
男ってほんとバカ。別れて初めてどんだけ大事な存在だったかやっとこさ知る。ほんとバカ。ばかばかばかばかぁあ
川本三郎が成瀬の映画は貧乏くさいのがいいって言っていたが、1933年の時点で成瀬は成瀬だったんだな(?)と思いました。
josh

joshの感想・評価

4.8
大仰な演出や編集もないのに終始画面に釘付けにされて、1つ1つの画の強さに圧倒された。水久保澄子の表情や目が素晴らしい!
題名からしても最後には別れることが決定付けられている中で、電車で2人がチョコレートを食べるシーンや、海辺でのシーン(一度だけ海を背景に字幕を載せてくるとこ凄まじい…)は哀しくもあるけどあまりにも瑞々しかった。
slow

slowの感想・評価

4.2
様々な愛が絡み合う(ドロドロと言うわけではない)サイレント映画。
芸者の母と息子。その母を慕い、息子にも想いを抱く後輩芸者の少女。息子は母が芸者をしていることが嫌で不良グループとつるむようになり、少女はそれを心配して….とベタな話ではある。しかし、細かいユーモアとサイレントならではの丁寧なカットの数々はどれも新鮮に感じられ、堤幸彦もここまではしないだろう攻撃的なズーム(当時はズームレンズがなかったと思われるので、カメラが寄ってる?)の連続にはびっくり(ややクドくて笑った)。また60分というコンパクトさがちょうど良かった。

吉川満子は『生まれてはみたけれど』でも母親を演じていたけど、お母さんがよく似合う。そして少女を演じた水久保澄子の瑞々しさ。当時アイドル的な人気があったようだけど、仮に現代でもトップクラスじゃないかな。惚れる可憐さ。
母や少女がその仕事を続けざるを得ない理由は酷で切なく、2人の台詞に胸が苦しくなった。
でもやっぱり一番は水久保澄子か。想いを絞り出す瞬間が不意で、その言葉にスッと脱力していくのを感じた。
アメリカ盤クライテリオン・コレクションのエクリプス・シリーズ#26 SILENT NARUSEより。思春期のイニシエーションもののメロドラマを破壊の映像記号で埋め尽くす。靴下の破れ、ナイフで突き刺された畳、ビールや卵の割れ、家族崩壊、悪友との決別、お客との破綻、そしてタイトル…e.t.c.e.t.c.e.t.c.
ひろ

ひろの感想・評価

4.8
磯野秋雄の同級生が自宅に来た時、部屋に置かれている化粧台や三味線などのショットが順に出て来て、その後、同級生が渋い表情をしているショットになり、芸者という仕事への偏見が見える。

その同級生が自宅に来た時は、ズボンは穴が開いていて、それを帽子で隠すが、帽子にも穴が開いていて、さらに肩掛けバッグの肩掛けがちぎれる。
それに対し、磯野秋雄が制服姿で現れた時は、穴などは開いていない。磯野秋雄は母親が芸者である事を嫌がっているが、しっかりした服を着させてもらえる生活であるのが分かるのはとても面白い。

水久保澄子と磯野秋雄が出会うところで落ちるナイフ、水久保澄子の地元で落とすお酒、「落下」が劇的に物語を突き動かす。

母親役の吉川満子が、磯野秋雄を愛してるのは当然だが、水久保澄子が磯野秋雄を愛してるのは終盤に「好きだった」と言うだけで、前半は台詞では出て来ない。(観てれば分かるのだが)
ただ、描き方を観ると、愛してるから磯野秋雄の事を心配するのではなく、心配して気に掛けてるから磯野秋雄を2人は愛してるのだと分かるって感じ。なんだ、この感覚は。
あったかい映画。

そこここで微笑みを誘い、観客を沈みこませることがない。
タイトル通り物悲しいストーリーなのだけど、鑑賞後は爽やかな気分になりました。
(今回、天池穂高氏によるピアノの生伴奏付きで観ることができたので、天池氏の力も大きかったことを付記しておきます)

いくつかの細かなユーモアは、あとで振り返ると笑うことではないよなって思うのもあったり、貧しくも逞しい登場人物たちはとても魅力的。

それとカット割りが多くて驚きました。しかもとても効果的で、この時既にモンタージュが確立されてたんだなあと。時代を考えれば当たり前なのかもしれませんが。
ドリー・インが多用されててこれもまたビックリ。どうでもいいことだけど、ピント合わせるの大変だったろうな・・・。

成瀬巳喜男監督の作品に触れるのは学生の頃以来。それも「浮雲」と、あとタイトルも忘れてしまったぐらいいい加減な記憶。温故知新。もっと古い映画に触れたいと思わせてくれる映画でした。っていうか触れろ俺!

最後に。
この映画が公開された1933年、海外ではナチスが台頭し、国内では治安維持法が牙を剥き出した頃。当時の人たちはきな臭い何かを感じていたでしょうか。そして、この映画を観て、どんな気持ちで映画館を出たのでしょうか。

聞いてみたいところです。


(2015.9.22 神保町シアターにて鑑賞)
のなみ

のなみの感想・評価

5.0
傑作。

嬉々として繰り返されるトラッキングに成瀬の若さや実験精神を見た気がする。

血の出ている親指→穴の開いた靴下→炭で黒く塗る親指…などイメージの連想に代表される、悉く映画的な細部が素晴らしく、また中間地点であることを強調する「橋」や「プラットホーム」などのロケーションに対する感性もこの頃から一流だったのだと知る。そして、何度となく振り向く女たち…素晴らしかった。