白眉ちゃん

飛行士の妻の白眉ちゃんのレビュー・感想・評価

飛行士の妻(1980年製作の映画)
3.5
『夏へと向かう雛たち』

 基本は三角関係。玄関のメモ、電話、居眠り、バスの乗り降り、行き違いやすれ違いが恋愛劇を形作る。この映画にみる恋愛哲学やそれに基づく作劇法はロメール映画の定番とも言える。尾行は映画の愉しみのひとつだがここでは世話焼きな女性によって青年の恋愛を客観視させ、解体させる。若くて未熟、身勝手で嫉妬深い青い恋模様。それらが一日という時間感覚の中で描かれる。これらの要素は後年の『夏物語』('96)に引き継がれる。『夏物語』では一日を一夏に拡張し、3人の女性の間で青年の心は揺れる。バカンスという時間感覚で三角のすれ違い。「飛行士の妻」は後年の傑作の、その雛型である。
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