白眉ちゃんさんの映画レビュー・感想・評価

白眉ちゃん

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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.0



 過去のSF諸作の要素をチラつかせながら、多少のビジュアル面の新鮮さもあり、二時間のSFアクションとしては及第点の満足感がある。しかしながら、ドラマの部分においては凡庸な印象である。妻を見つけ出す
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恋する人魚たち(1990年製作の映画)

4.0



 前半こそ、ユダヤ系でありながらカトリックの修道女に憧れるシャーロットの多感な恋模様をただ楽しむに尽きるのだが、この映画の時代設定が1963年であることの意味が示されるとただのコメディドラマ以上の
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MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

3.5

『愛とは開きゆく扉、愛とは私たちが回すべき鍵』


 コード(記号)を読むことは、絵画美術の基本的な鑑賞方法である。同じく視覚的な芸術であるところの映画もまた、コードは重要な役割を担っている。門やトン
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FALL/フォール(2022年製作の映画)

4.0


 手に汗握る極限の高所スリラー。
序盤こそ陳腐なキャラクター造形や説明的な話の運びとカット割りに不安を覚えたものの、シンプルな設定だけに感情移入しやすいわかりやすさが重要だったと意図を理解する。
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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.0



 トム・ホランド主演の実写版スパイダーマン・シリーズは、三作目にあたる『ノー・ウェイ・ホーム』('21)でもってようやく「大いなる力には、大いなる責任が伴う」のセリフを聞くことができた。これは、今
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her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

5.0

『人生という、あらかじめ決められたディストピアで生きていく』


 代筆ライターのセオドアは以前ほど仕事に情熱を感じられなくなっていた。文章に美しい言葉を飾っても何かが欠落している気がしてならない。高
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KIMI サイバー・トラップ(2022年製作の映画)

3.0


 アルフレッド・ヒッチコックの『裏窓』('54)は、事故療養で部屋から出られない男が裏窓から隣人の生活を観察していると、ある家庭の妻が行方をくらませたことに気づき事件を疑い始めるサスペンス映画だ。あ
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.0

『男の安寧へと帰着する赤い動線について』


 赤のサーブ900ターボが緩やかに走っていく。機械式駐車場から放たれたそれは東京の洗練された市街を、海をまたぐ長大橋の上を、雪国の田舎道を滑らかに通り抜け
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AIR/エア(2023年製作の映画)

3.5


 後世に生きる私達はマイケル・ジョーダンの偉業も「Air Jordan 1」ブランドの成功も既に知っている事とは言え、この映画のサクセス・ストーリーのカタルシスは抑制的である。ビジネスマンの成功体験
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別れる決心(2022年製作の映画)

3.5



 この映画、随分と頭を抱えさせられてしまった。というのも映画館で見た予告編が多分にミスリードを含んでいたからだ。まずパク・チャヌクの新作と聞けば一癖も二癖もある作品が期待される上、刑事と被疑者を題
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弟とアンドロイドと僕(2020年製作の映画)

4.0


「”自己”とはそれ自体が抽象概念であり、フィクションにすぎない」
冒頭に認知科学者のダニエル・デネットの言葉が引用され、このことからも自己認識についての映画であることが推察される。ロボット工学者の桐
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アムステルダム(2022年製作の映画)

3.0


 ディレンベック将軍(ロバート・デニーロ)のモデルになったスメドレー・バトラーは米国海兵隊の「英雄」とされる軍人で、退役後に戦争が政治家や資本家の利益の為に引き起こされていることを告発した人物でもあ
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アフター・ヤン(2021年製作の映画)

3.5

『僕らは今、人間に成ってるところ』


 従来のSF映画では、人間と長く暮らした人工生命体(俗に言う、人間型ロボット・ヒューマノイド)は次第に自由意志を欲して「人間になりたい」と考えるようになる展開が
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.0

 二回目を観てから書こうと思っていたが上映終了してしまっていた。配信開始時に読み返す用に書き記しておく。


 過去作『ゲット・アウト』('17)や『アス』('19)同様に、システミック ・レイシズム
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暗くなるまで待って(1967年製作の映画)

4.5

「暗闇の中でもただあなたの愛を信じている」


 テレンス・ヤング監督の『暗くなるまで待って』('67)が好きだ。映像演出(又は脚本)において、主人公に差し迫る危険を観客にだけ明示して緊張感を煽るもの
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あの日のように抱きしめて(2014年製作の映画)

3.5

『愛と尊厳が火花のように瞬いて』

 大戦後、強制収容所からユダヤ人女性のネリーが奇跡的な生還を果たす。彼女はナチス兵士の暴行によって顔にひどい銃傷を負い、かつての面影はすっかりなくなっていた。しかし
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飛行士の妻(1980年製作の映画)

3.5

『夏へと向かう雛たち』

 基本は三角関係。玄関のメモ、電話、居眠り、バスの乗り降り、行き違いやすれ違いが恋愛劇を形作る。この映画にみる恋愛哲学やそれに基づく作劇法はロメール映画の定番とも言える。尾行
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ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022年製作の映画)

4.0

『狂気を癒す少しばかりの愛』


 平行世界を行き来する少女に「アメリカ」の名を冠し、星形のポータルを通して異なる法則や因果律で成り立つ世界を垣間見せる。ここでの星は紛れもなく星条旗であり、州ごとに独
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

3.5

『青年は胸にいっぱいの感傷を抱えて漸く自分の道を歩き始めた』 


 もとより60年代のアメリカン・コミックの世界でスーパーヒーローと言えば筋骨隆々とした大人が主流だった中、理系オタクのティーンネイジ
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.0

『逃避行未満の逸脱劇』


 再見。今年特集された『ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ』の4作品の中で、デビュー作にあたる『リバー・オブ・グラス』が犯罪逃避行モノのジャンルを解体するようなオ
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レミニセンス(2021年製作の映画)

3.5

『沈みゆく男の世界に女は手向けの花束を投げた』


 監督・脚本はリサ・ジョイ、共同製作者はジョナサン・ノーラン。このコンビというとSF映画『ウエストワールド』('73)をリメイクしたHBOドラマシリ
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アクエリアス(2016年製作の映画)

4.5

これもまた観たいなー。

脈々と続く家族の歴史が依拠する"家"という場所。
失われた片方の乳房。朽ちていくカラダ。
生き続けることは、常に闘いなのだ。
先天的、或いは後天的に身につけた記憶や性癖を毎秒
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イェリヒョウ(2008年製作の映画)

4.0

また観たいなー。
一ヵ月前くらいに観に行って、レビュー書かなかったんですよね。

・前提の丁寧な脚本。
・アリのキャラクター。
・郵便との差異。
・スリリングな不倫劇。
・借金と家政婦。
・アリの主人
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Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)

3.5

『J.Wと対をなすストラッグルの記号』


 平凡で冴えないと思われていた男が実は諜報機関にも所属していた程の凄腕で、奪われた(或いは失われた)愛や自らの領域を侵害されたことをトリガーに過激で娯楽性の
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クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2021年製作の映画)

4.0

『人間はなんと鈍感で騒々しい生き物だろうか』


 前作『クワイエット・プレイス』('18)は、音に反応し殺戮を行う地球外生命体の襲撃によって、微かな音さえ立てられない極限の緊張感を提供するサスペンス
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1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.0

 監督のサム・メンデスは今作を撮るにあたってTVゲームを意識したとインタビューで答えている。確かにカメラが終始、主人公の背後を付き従い、伝令ミッション完遂までをロールプレイする映像はTPS(三人称視点>>続きを読む

水を抱く女(2020年製作の映画)

4.0

『ウンディーネが抱いて眠るベルリン慕情』


 映画はカフェの一角での別れ話から始まる。不実な恋人ヨハネスに対して、「(戻ってくるから)愛していると言って。あなたを殺すはめになる。知っているでしょ」と
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イエスタデイ(2019年製作の映画)

3.5

『なくすことで浮かび上がる真の愛の存在』


 私達のこの現実世界でビートルズがいなくなった日がいつかと考えると、それは80年にジョン・レノンが彼の自宅のあるダコタ・ハウスの前でマーク・チャップマンの
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ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)

3.0

『愛すべき人がいない世界に残された一人の女とワンダーウーマンの分離点』 

 
 ワンダーウーマン(WW)ことダイアナ・プリンス。彼女は第一次世界大戦下を舞台とした前作『ワンダーウーマン』(’17)で
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.5

『緻密に構築された”切り離し”の映像世界』

 確かにクオリティの高い作品だ。古典映画に倣った上下構造の象徴性と風刺性。半地下者が富裕家庭にパラサイトしていく前半の痛快な喜劇。そして完地下者の存在が露
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

4.0

「愛し方の難しさ、人生の波間を漂う、それでも両手を拡げる偉大さ」

 Animal Collectiveの「FloriDada」が映画の幕開けをアナウンスする。恋人とドライブする車内、レスリングのコー
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ルルドの泉で(2009年製作の映画)

4.0


 "愛情"や"幸福"といった抽象的な概念は人や環境により容易く変貌する。善人が苦しみ、嫉む人が利を得ることもある。"奇跡"を体現する彼女の覚束ない足取り、儚く所在ない。この世界と私達の危なげな実存。
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アフター・ウェディング(2006年製作の映画)

4.0

「祝福されるべき花嫁の出現と私達の欺瞞のベール」

監督スザンネ・ビアと脚本アナス・トーマス・イェンセンのたぶん三作目。

 定型的な三幕構成だ。一つ目の真実(アナがヤコブの実子であること)が露見し、
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透明人間(2019年製作の映画)

4.0

『「見える見えない」の恐怖であり、「どう見えたかどう聞こえたか」の恐怖でもある』

 従来の透明人間映画が透明化した本人を主人公に据えていたのに対し、今作は透明人間に付け狙われる被害者を主人公とする。
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デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

3.0

「死体は死なない。されど活きてもいない?」

 ジョージ・A・ロメロ監督の傑作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)により定義され、擁立されたゾンビ映画というジャンル。続編の『ゾンビ(原題:Da
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ある愛の風景(2004年製作の映画)

3.5


 前作『しあわせな孤独』(02)に引き続 き、アナス・トーマス・イェンセンを脚本に据える。今作も男ふたりと女ひとりを主軸として物語は進行する。

 夫を戦争で亡くし、深い悲しみの底に落とされた女は同
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